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集合住宅.18:風が通り抜ける田の字
物件データ

構造:
RC造8F

築年月:
2013年8月

総戸数:
74戸

専有面積:
70.58平米

バルコニー面積:
11.40平米


平面図

共用廊下に面する玄関の左右に個室が一つずつ。 そして反対方向のバルコニー側にリビングダイニングキッチン。 そこに隣接させて和室を配し、残余に水廻りを集約。
一般的に“マンション田の字”と呼ばれる集合住宅において定型化された極々普通の骨格を持つ3LDKのプランだ。
しかし、それでありながら同類の他のプランと少々趣きを異にする点が二つ。
一つは居室の出入り口が全て引き戸であること。 そしてもう一つが、個々の居室に専用の収納を設けず、替わりに大型共用収納を設けていること。

住戸内に二箇所設けられた大型共用収納は、いずれもいわゆるウォークスルークロゼット(以下、WTC)。 収納内部を通って別の室に連絡することが可能となっている。 つまり、玄関左側の個室はWTCを介して和室からリビングへ。 右側の個室も、WTCを介して水廻りからキッチンへと連絡が可能だ。
いわば、廊下以外の住戸内動線の多岐化。 これは実際に住むうえでなかなかに重宝であろう。
そしてWTCの扉を含め、この住戸のもう一つの特徴である居室部分への引き戸建具の採用が、更なる効用をもたらす。 つまりは、風通しである。 普段、建具を開け放しておく際には、開き戸よりも引き戸の方が有利だ。 引き戸を開放することで、WTCを介してバルコニー側から開放廊下側に風が通り抜ける。
更には玄関脇に設けた小窓も、防犯性を維持しつつ廊下を介した風の流れを生み出すことが出来る。

省エネとは、断熱性能や導入設備機器の性能のみによって達成し得るものではない。 風通しも重要な要素だ。
断熱や設備機器の性能による省エネ性能の向上が限界に至りつつある今、高断熱高気密に代わる新たな環境配慮の在り方を住戸の構成に付与させることが求められ始めているのではないか。

ちなみにこのプラン、リビングルームの開口正面のバルコニー手摺に花台の様なものが設けられている。
ここにプランターを置き、ネットを張って蔦状植物を這わせることで壁面緑化を形成。 夏期におけるリビングへの日射侵入制御を図ろうという意図であろうか。 あるいは同様に玄関正面に設けられた花台と併せ、建物の暑熱環境緩和やヒートアイランド化の低減を期待しようとしたのかも知れぬ。
そんなところにも、環境負荷に配慮したプランという意識が窺える。

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