この規模で勝手口付きというのは珍しいと思い、載せてみた。
比較的プランニングの自由度が高い妻側住戸であることと、間口が広いことが可能にした間取りであろう。
共用廊下からアルコーブに入ると、微妙な角度を付けて玄関ドアが配置される。
玄関ドアとトランクルームを微妙に角度を振って設けることで、狭小な空間を巧みに処理している。
ここは、矩形でまとめようとするとなかなか巧く納まらないだろう。
対面して、勝手口が付く。
勝手口を入ると、「ミセスコーナー」という名称の付いた空間を介してキッチンや洗面室に至る経路が確保されており、効率的な家事動線が形成されている。
但し、このミセスコーナーは少々閉鎖的で、寛ぐブースとして活用することは難しそうだ。
単なる家事コーナーか物置と化す可能性が無きにしも非ず。
主婦をターゲットとした販売遡及効果としてこの空間を提案しているのであれば、もう少しきめ細かな造り込みが求められよう。
更に、このミセスコーナーから続くキッチンも、リビングに背を向けた形態。
直交して対面カウンターは設けられているものの、ミセスコーナーを含めたこのキッチンレイアウトがどのように評価されるか気にかかる。
その点は別にして、このプランでは、水廻りを中心にアルコーブ部分も含めた「8の字型」の周回動線が形成されている。
つまり、廊下〜洗面所〜キッチン〜リビングルームという円環と、廊下〜洗面所〜キッチン〜ミセスコーナー〜勝手口〜玄関という円環の組み合わせ。
単なる「マンション田の字」型では得られぬ動的なプランだ。
限られた面積の住戸内に複数の動線が確保されることは、物件No.1やNo.7でも述べている通り、その面積以上の広がり感を得ることが期待される。
勿論、それによって諸室の面積に影響がでては意味がないが、このプランではその点、巧くまとめられている。
もう一つの特徴として、個室への出入り口が全て引き戸形式となっていることが挙げられる。
他の事例を観ていただければ判る通り、通常は開き扉が用いられるところだ。
開き扉は、その開閉軌跡の範囲内に家具が置けないというデメリットがある。
しかしここでは引戸が採用されることでそれが解消され、家具レイアウトの自由度が少々ではあるが高まっている。