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間取り逍遥
集合住宅.11:南入り玄関タイプ

物件データ

構造:
RC造7F

築年月:
2008年2月

総戸数:
45戸

専有面積:
71.73平米

バルコニー面積:
10.94平米

テラス面積:
17.75平米

平面図

短冊状の住戸を積層し、板状箱型のボリュームを形成する形式の通常の集合住宅は、さまざまな制約のために戸建住宅のようなしつらえは、なかなか望めない。 とりわけ、玄関廻りは外部側も内部側も寂しくなりがちだ。
その点において、この間取りは面白い。接地階住戸ゆえに可能なプランニングだ。

通常北側に設置される共用廊下を廃し、そのかわりに南側に設けた専用庭側にアプローチを介して玄関を配置している。 その専用庭には、駐車場や駐輪場、そして門扉や植込みやテラスを設け、戸建住宅のエクステリア風のしつらえを形成。
そんなエクステリアからアクセスする玄関にはコーナーサッシを設け、明るい玄関ホールを実現している。

ここまでは、専用庭を有する接地階住戸には時折見受けられるパターンだ。 玄関廻りが内外ともに充実しているだけでも、集合住宅では希少価値である。
しかしここでは、更に特徴的なプランが提案されている。 つまり、玄関にダイレクトに繋がる和室の存在だ。
二本引き込み形式の間仕切り襖を全開放すれば、玄関と一体になった贅沢な接客空間が展開する。 あるいは、和室側から捉えれば、土間つきの広縁と位置づけて活用することも可能であろう。 そして、両者に隣接するリビングダイニングとの連携もスムーズだ。
いずれにしても、平準的な集合住宅の住戸形式を骨格としながらも、通常では獲得し得ぬ空間を実現している。

この上部に積層する住戸は、北面のバルコニーが共用廊下となり、北側の二つの居室に挟まれた収納部分が玄関となるのだろう。 そして和室の面積を広げ、いわゆる通常の「マンション田の字」が形成されているのではないか。
接地階住戸の和室が基準階に比べて狭いことは南側玄関設置が原因であるが、それによってもたらされる居住性とはトレードオフの関係と言ってよいだろう。



2012.04.14/記