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間取り逍遥
集合住宅.08:田の字中央貫通型

物件データ

構造:
WRC造5F

築年月:
1978年3月

総戸数:>
410戸

専有面積:
57.13平米

平面図

※1:
個人的には、脱nLDKという指向に興味は無い。 nLDKであろうと、脱nLDKであろうと、結局は、住居の中における公私の関係の在り様を操作しているに過ぎぬ。 あるいは、脱nLDKは、設計者が自らのプランニングに、言葉という手段をもって新進性を付与(ないしは偽装)するための便利な護符として悪用されている概念でしかないのではないか。

田の字型間取りの中央部分を南北に貫く形で1間幅の空間が挿入された間取り。 仮にこの帯状のスペースをAと名付けよう。
キッチンセットがあるために、この細長いAの用途はある程度限定される。 つまり、単純には少々タイトなリビングダイニングキッチンだ。

Aの空間が生成されるに至った理由は、限られた面積の中に、3LDKを作り出しそうとした結果なのだろう。
しかし、中途半端な広さと形であるがために、別の展開性をも含んでいる。 すなわち、共用空間としてのAに個室が緩やかに連結する個室群住居という見立てだ。 つまりは、脱nLDK※1
Aは、nLDKと脱nLDKの両義性を間取りの中に導入させる空間ともいえそうだ。

別に、そこまで話を飛躍させてこの間取りを捉える必要は無い。 それでなくとも、このAの空間は十分魅力的だ。
例えばこれは、外部に対して直交配置された変則的な縁側的空間だ。 その両端が開口部によって外部に開放されることで、ここを介して光と風が屋内を巡る。
あるいは、住戸の中央に設けられた通り庭とも言えよう。 この通り庭を緩衝帯にして、南面の二室が穏やかに間仕切られている。
考え方によっては、様々な面白い住まい方の展開が可能かもしれない。

ところで、この間取りは物件No.05と形式的に類似している。 物件No.05の南西側欠損部に居室を付加すれば、当該物件の間取りとほぼ同じ諸室配置構造になる。
しかし、この欠損の有無によって、それぞれのサブタイトルに表している通り、間取りの捉え方が大きく変わってくる。 LDKの幅の違いも、それを補完する要素であろう。

蛇足になるが、キッチンから出入り可能な北側バルコニーと、そこに設けられたトランクルームは、なかなか貴重だ。 昨今のマンションには無いバックヤード的な空間として、有意である。



2010.10.30/記