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間取り逍遥
戸建住宅.22:履歴としての諸室配置

物件データ

構造:
木造

築年:
1930年

敷地面積:
163.53平米

床面積:
104.80平米

諸室の配置や動線に関しところどころに生じている不可解な納まりは、竣工時からのオリジナルでは無かろう。 築年数を鑑みれば、それが幾度も繰り返されてきた増改築の結果と容易に想定し得る。
如何なるプロセスで今に至ったのか。 あるいはその時々の修繕において、どの様な事情若しくは意図で改変の手が加えられたのか。 読み解くのは容易ではないし、もはや意味も成し得ぬ。
そこにあるのは、ある意味“生きられた家”の記録。 住むことにまつわる様々な痕跡が複雑に堆積し尽くした時空間だ。


平面図:

この様に書いておいて推察するのもどうかとは思うが、例えば南角の浴室及び洗面室は、その強引な取付き方を鑑みれば後補であろう。 元々は、浴室に近接する6帖間の二手に配された縁側が矩折りに連続していたのではないか。 あるいは、南西に張り出す床の間付きの6帖間や広縁も増築かもしれぬ。 そして玄関からキッチンまで線形に連なる北東側の一間幅の部分は、かつては通り土間であった可能性も伺える。
それらの可能性を積み重ねると原初の様態が見えてこなくもないが、しかしそれはやはり一つの推定にしかならぬ。

ともあれ、改変に継ぐ改変の結果であろう現況は、一つの室から他の室に移動する際に必ずそれぞれの室に付随する次の間的な空間を介す必要が生じている。 そのことで、室どうしの独立性ないしは距離感を生み出している。
それが、住み続ける中で求められ編み出された空間構成の知恵なのか。 それとも単なる偶然なのか。 一般的な意味での合理からは程遠い間取りの中に、様々な物語が見えてくる。



 
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2024.05.11/記