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間取り逍遥
戸建住宅.18:T字型の敷地に建つT字型の家

物件データ

構造:
木造

築年月:
2017年7月

敷地面積:
97.44平米
延床面積:
76.33平米

プランの外形から敷地形状や周辺の状況がある程度推察出来る。 玄関部分が出っ張ることで形成されるT字状の外壁面のすぐ外側に沿う様に隣地境界が巡らされているのであろう。 但しそれだとTの字のちょうど縦棒にあたる部分が随分短い形の敷地ということになりそうだが、恐らくそこは違う。 玄関を出てすぐの場所に公道は無い。 宅地として成り立つ法的な最低条件を満たす幅の私道がその先に暫く伸び、公道の手前で少し幅員が広がり車一台分の駐車スペースが確保された上で漸く接道する。 そんな状況によって文字通りT型の敷地形状を成していると思われる。


一階平面図

二階平面図

三階平面図

このT字の縦棒部分の両脇には、同時期に建てられ分譲されたのであろう住宅が隣地境界ぎりぎりに配棟されているのではないか。 そして二棟の僅かな隙間に通された私道の奥に、当該住宅の玄関部分が見える。 ミニ開発戸建において良く見受けられる光景だ。
もともと南西側一面のみが接道する一つの敷地であったものを三つに分筆。 接道面に二棟分の敷地を設け、その二つの敷地の間に私道を通して奥にもう一つの敷地を設定。 その奥の敷地に当該物件が位置するのであろう。

タイトな条件であるがためにいびつなものとなりがちなこの手の間取りにおいて、当該事例はT字型であることによってやや救われている。 つまり、長辺方向の中央に玄関と階段を配置して屋内動線をその部分に集中。 そこを核に諸室を左右に振り分けることで、例えばリビング内を動線が横断する状況を回避している。
この間取りにおいて、恐らく掃出しサッシは二階と三階それぞれのバルコニーに面する開口のみ。 それ以外は、ハイサイドライトか下端が相当高い腰窓。 そして嵌め込まれているガラスも網入り型板なのではないか。 バルコニーに面する箇所以外のサッシを大開口にしたとしても、そしてそこに透明ガラスを嵌め込んだとしても、拝めるのは殆ど離隔も無く近接する隣の住棟の壁面や屋根のみ。 そして現況は周辺にやや余裕があるために設けたのであろう三階両翼のバルコニーも、恒久的に所与の機能を確保し続けることが可能か否かは定かではない。

このプランに手を加えるとするならば、二階のキッチンとトイレの配置の是正ということになろうか。 建売り住宅の商品企画として対面キッチンは必須ではあるが、それを犠牲にしてでも少々調整したいところだ。



2017.08.05/記