日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです
町並み紀行
建築探訪
建築の側面
建築外構造物
ニシン漁家建築
北の古民家
住宅メーカーの住宅
 
INDEXに戻る
間取り逍遥
戸建住宅.12:外周階段の家

物件データ

構造:
RC造3F

築年月:
1990年

敷地面積:
31.68平米

延床面積:
61.88平米


タイトルの通り、外壁三面に沿って階段がぐるりと廻り各階を連絡する。 そしてその階段に包み込まれるように諸室が配置される間取り。

狭小三階建て住宅の場合、垂直動線が階段室のみで完結せずに居室内を経由するケースが非常に多い。 例えば物件No.11もそれに該当する。
一階から二階に昇ると直接リビングダイニングに面する。 そして三階に昇るためには、リビングダイニングの中を通り、三階に至る階段の昇り口に進まなければならぬ。 いわば、踊り場と居室を兼ねることで狭小空間の有効利用を図ろうというもの。
ついでに家族の共用室であるリビングに動線を通すことで、お互いのコミュニケーションが醸成出来るというタテマエも成り立つ。 しかしながら、動線が絡むことでリビングが落ち着きのない空間となってしまう可能性も無くはない。

このプランは、狭小ながらもその様な垂直動線の錯綜が存在しない。 階段室は階段室で完結している。 それを可能とするのが、建物外周に階段を廻すやり方だ。


各フロアは、階段下や上部を巧く活用して水廻りや収納を効率的に収め、整形な居室を確保している。 とはいえ、二階のサニタリー部分は結構タイト。
かつて、三点ユニットバス※1で0816サイズの商品があった※2。 三点仕様としては最小のもの。 この物件の場合、階段下活用のために斜め天井が発生する都合上、この様なユニットバスは用いられなかったのであろう。 在来湿式工法にてギチギチに納められている。
もしも三点ユニットが採用されていたならば、二階キッチン脇に半間弱の余裕が出来るので、冷蔵庫置場を設けることが可能であった。

なかなかタイトなプランの中で、三階にはサンルーム的な空間が設けられている。 狭く暗く、そして折れ曲がっているために先が見通せぬ階段を昇りきると、自然光が燦々と降り注ぐ開放的なサンルームに至るという空間の仕掛けが、狭隘な住まいの中にささやかな物語性を付与しているのかもしれぬ。

※1
トイレと洗面と浴槽を一つに纏めたユニットバスのこと。


※2
0816はユニット縦横の内寸呼び寸法を表す。 つまり、短辺方向の室内幅が約800mm。 長辺方向が約1600mm。
内寸だから、外形を含めた設置可能スペースはもう少し広めに必要であるが、それでも畳一帖よりやや広めのスペースがあればトイレ風呂洗面が設けられることになる。


2015.02.07/記