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間取り逍遥
戸建住宅02:階段が規定する特性

物件データ

構造:
木造2F

築年月:
1973年11月

敷地面積:
73.55平米

延床面積:
66.74平米
とりたてて優れた間取りと思っている訳ではない。 にもかかわらず、何か引っかかる間取りだ。
ポイントは階段を中心軸に左右でほぼ対称な間取りを形成していること。 そして、一階における階段を挟んだリビングとダイニングキッチンの微妙な接し方だ。

一階平面図

二階平面図

対称性は、玄関を入ったところから顕著に顕れる。 階段を正面中央に据え、その左右に同じ扉。 ただそれだけの明快な構成だ。 二つの扉のいずれを選択しても、結局はどちらの部屋にもアクセス可能なところが少し楽しい。
一階における対称性は、水まわりのレイアウトで崩れる。 しかし、この玄関廻りだけで十分個性的だ。 いや、あるいは設計者は、この玄関周辺の対称性のみに全てのこだわりを注いだのかもしれない。 なぜなら、二枚の扉の対称性にこだわらなければ、リビング部分を欠き込みの無い整形な居室に出来たのだから。
しかもこの玄関前の廊下、通常ならば奥行きを半間幅で納めるところであろう。 ところが、ここでは半間の1/4、つまり約23cm程度がプラスされ、少々広くなっている。 その分、階段の段数が通常よりも1段減らされている。 これは、広告掲載の平面図をトレースしていて気付いたことなのだが、そんな僅かなスペースの調整も、玄関廻りへのこだわりと解釈できそうだ。

更に、二階。
畳の敷き方から建具の位置、そして押入れのレイアウトまで、綺麗に対称形である。 また、中央に設けられた階段により、二つの居室の独立性が高まっているともいえる。

そして、一階のリビングとダイニングキッチン。 階段によって、両者がコの字型に柔らかく分割されている。 このことにより、ある程度独立しながらもお互いの気配が微妙に感じられる空間を形成している。
二階では厳格に居室を分かつ階段が、一階では柔らかな分割装置として機能する。 そんなところも面白い。

いずれにせよ、階段の位置が全てを決定している狭小住宅だ。



2008.11.28/記