日本の佇まい
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住宅メーカーの住宅
不可解なモデル.01:ミサワホームGII型 |
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0.不可解なモデル | ||||||
「住宅メーカーの住宅」のページは、ミサワホームに関する記述が多い。
関係者かと思われる方もいらっしゃるかもしれないが、全くそういったことは無い。
もしも関係者なら、過去の商品ではなく現在のラインアップについて、商業的な意図をもって熱く提灯記事を書き綴るところだ。
ところが、今のところ最近の同社の動向には以前ほどの関心は無い。 ここでいう「以前」とは昭和50年代のことになる。 しかし、ミサワホームだからといって、当時の全ての発表モデルが無条件に良かったと思っている訳ではない。 その商品的魅力について理解するに及ばぬモノもあった。 |
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1.異形の入母屋 | ||||||
例えば、ミサワホームGII型。 1981年7月1日に発表されたモデルだ。 初めて見知ったのは新聞広告。 そこに載せられた外観(写真1)の第一印象は、あまり良いものではなかった。 外観構成パーツは当時の他のモデルと共通する。 しかし、その組合せ方やレイアウトによってはこの様になってしまうものかと驚いた。 屋根の形状も奇妙だ。
落胆しつつ平面図に目をやると、これがまた良くない。 リビングルームに直接面して洗面化粧室への出入り口が設けられている。 入浴する時もトイレで用を足す時もリビングルームを通ることになり、感心できない。 キッチンやダイニングルームについても、リビングが通過動線となっている。 また、プランバリエーションの一つである図1の場合、リビングの奥行きが深く、奥の方は自然採光のみでは照度が少々不足しがちになろう。 暗い色調の床面が、そのことを一層強調する。 それと、一階と二階の壁配置の整合性が崩れている。 二階の諸室の配置と廊下の取り付き方も美しくない。 同時期における同社の他のモデルに通底する拘りからすると極めて異例なことだ。 図中の二階南東の個室などは、ちょっと大きめの家具を搬入するのも一苦労であろう。
今でも時折GII型を見かける。
北側のファサード(つまり、写真1の裏側の立面)は、比較的綺麗にまとまっていると思う。
しかしながら、このモデルの全般に関して私が抱く印象は未だに、初めて新聞広告を見た時と同じく「入母屋のオバケ」だ。 |
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2.矮小化の歪み−ミサワホームG型との関係 | ||||||
※1:
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1978年にミサワホームが発表したミサワホームG型は、当時の同社の最上位モデルになる※1。 検討の結果編み出されたプラン(上記1.図1参照)を前にして、開発担当者達は我が意を得たりと大いに満足したのではないか。 G型の骨格を踏襲しつつ、延床面積を20坪近くも縮減したコンパクトなプランの実現。 それは即ち、G型のステータスをある程度留めつつ、より広範なマーケットへの訴求が可能なモデルの誕生を意味する。 |
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写真2*:リビングルーム
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写真3*:玄関ホール
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※3: 写真2として引用したGII型のリビングルームは、G型のウェルカムホールと同様建物の中央に配置。 左手に見える一間幅の三角平面の出窓をウェルカムホールの大開口の縮小版と捉えると、和室との連携を含めG型との関連性が見立てられる。 |
しかし矮小化の歪みも生じる。
例えば、G型のウェルカムホールの廃止。
最上位モデルとしてのステータスを象徴するその空間は、大開口を介した眺望やプライバシー確保の点で敷地に余裕が求められた。
あるいは、壮大な吹抜け空間の温熱環境を整える光熱費を気にせぬ暮らしも求められる。
即ち、住む人を選ぶモデルだ。
その空間の整理は、矮小化にあたっての必須事項であったのだろう。 同じ系列に位置付けるためのG型の呪縛。 一方、縮小普及版という商品開発目的。 そのはざまで揺れ動くモデル策定経緯が平面プランから垣間見える。 |
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3.差異化の歪み−ミサワホームO型との関係 | ||||||
※3:
ミサワホームO型NEW外観* 初代O型の発売は1976年9月。 以降、本文に書いた当時の同社の5種の商品体系に属するモデルは、O型の設計手法を踏襲しつ個々に独自の方向性を付与されながら開発が進められた。 O型NEWは、初代モデルの後継であるOII型に続き1980年3月に発表された、いわばO型のバージョン3。 GII型と同じ時期のモデルとなる。 |
当時同社では、G型,O型,M型,A型,S型という5種の企画住宅を商品体系として編成していた。 |
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写真4:外観*
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※4:
上記※3に引用したミサワホームO型NEWでは、二階開口天端と軒を揃え雨戸シャッターは軒裏に収容。 この措置により外観を引き締めている。 |
結果として所与の目的を満たす意匠性を入母屋によって獲得し得たかといえば、否。
四角四面の総二階に載せるには、意匠の全体調整がなかなかに難しい屋根形態であった。
そして南側立面における軒と二階開口天端の離隔の発生。 東西妻面の葺き降ろしから生じたその離隔が、立面を野暮ったい表情へと堕す※4。 更にはその垂れ壁部に人の顔の眉毛の如く等間隔に並ぶ開口部のシャッターケースが、冒頭に示した「入母屋のオバケ」としての異形の印象を強める。 |
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4.歪みを超えて | ||||||
難しい位置づけに置かれることが開発当初から定められたモデル。 そのために内外観に呈すこととなった“不可解”。 それがミサワホームGII型なのではないか。
異形という点では、玄関廻りに施された斜めのカットも、外観プロポーションを損なっている。
直上の庇の納まりも奇妙だ。 異形の代償を伴いつつ、G型の要素を反映させた求めやすい価格帯の実現と、そして敷地条件への高い適用性を確保したモデルが、往時の商品体系の中に整備された。 |
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*引用した図版の出典:ミサワホーム
2010.09.04/雑記帳より移設 2023.05.13/改訂 |