日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです |
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住宅メーカーの住宅
光と大気が巡る家:セキスイハウス・PSH-21 |
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1.多種の決め事と多様な展開 | |||||||||
1982年11月に発表されたモデル。
そのため、自由設計でありながらも商品としてのアイデンティティを保つために守るべき設計上の決まり事がとても多いモデルでもある。
逆に、そのような多数の決め事を満足しつつ多彩なプラン展開を実現するところが、このPHS-21の面白味でもあろう。 |
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2.環境配慮計画 | |||||||||
2-1:日照の確保 | |||||||||
※1:
写真4* 外壁に対面するLDRのレンガ壁。右上にトランジットウィンドウが付く。 ※2: 断面構成概念図* 一階の左側が、3.2mの階高を持つLDR部分。 外壁に対面する壁の上部に設けたトランジットウィンドウと呼ぶ開口を介し、二階北側ドーマウインドウへと気流を作る。 |
リビングダイニングルームは、天井高を平準的なものより増やし、3.2mに設定。
そしてその天井高とほぼ同じ高さの窓を設置し、より多くの採光を室内に取り込めるようにしている。
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写真2* |
写真3* |
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この天井高設定の結果、リビングダイニングルーム直上に配置される居室のフロアレベルは、通常よりも高くなる。
いわば2.5階の位置に設けられることになり、例えば狭小地における採光確保にも有利に働くであろう。
更には、可能な限り全ての居室が南面することもルールとして設定されていたことが複数の事例から読み取ることが出来る。 これも、日射取得への拘りの一環であろう。 |
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2-2:パッシブソーラーデザイン | |||||||||
リビングダイニングルームに設けられた大開口は、採光の機能としては有利であるが、居住性を鑑みるならば日射制御も必要になる。
そのため、サッシを二重とし、その間にブラインドを設置。 更には観音開きの木製内戸が屋内側に取り付けられた四重の構成。 写真3は、木製内戸を閉じた状態だ。 これらの建具の開閉操作により、外部の状況に応じた室内環境の維持を可能としている。 この大開口に対面する壁面(写真3の向かって右側の壁)はレンガ張り仕上げとし、取り込んだ日照を利用した蓄熱体として機能※1。 また、床面も仕上げ材の下はコンクリートスラブとし、蓄熱性を高めることで、日射の有効利用を図っている。 レンガ壁には上部に一箇所開口が設けられている※2。 「トランジットウインドウ」と名付けられているが、この開口は二階の廊下に面している。 これは、二階のフロアレベルと、リビングダイニングルームの天井レベルがズレることによって設けることが可能になる開口だ。 この廊下は、必ず北側に設けられるハイサイドライトにも面するようになっている。 そのため、リビングダイニングルームの南面大開口から、レンガ壁部分のトランジットウインドウを介し、二階廊下上部の高窓へと室内の空気が動く設計としている。 多層構成の空間計画と、それに伴う開口部の効果的な配置によって、屋内温熱環境の維持が可能になっている。 |
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3.平断面計画 | |||||||||
3-1:多層構成による都市型住宅 | |||||||||
※3:
写真5* 主寝室と書斎をスキップフロアで区分しつつ一つの空間に纏めたプラン例。 LDR部分の3.2mの天井高によって生じる2階と2.5階の床段差を巧みに活用している。 |
全ての事例に共通する訳ではないが、多くの場合、敷地の有効利用の観点からインナーガレージを計画している様だ。
ガレージは通常の居室ほどの天井高は必要としないので、その直上の空間は通常の二階居室よりも低い位置に設定することが可能になる。 このインナーガレージを北側に配置し、その上にフロアレベルを低くした中二階(1.5階)の空間を設けることで、北面の建物高さを抑え、北側斜線等の法的制約への対応性を高めている。 また、このガレージ上部の1.5階と、リビングダイニングルームの直上の2.5階部分を組み合わせることで、変化に富んだ多層構成の屋内空間を実現している。 この中二階部分は、ガレージ配置の都合上北側となるため、全ての居室を南面させるというルールに則るならば、居室は設けられない。 従って、洗面室と浴室が配置されることになる。 |
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3-2:設計上の決め事 | |||||||||
さて、これらの空間的特質を満足するためには、設計上幾つかのルールが発生する。 プラン事例と共に列記すると、以下の通り。
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1.
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インナーガレージを設ける
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2.
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インナーガレージの直上に中二階を配置するため、2階にアクセスする階段を必ずインナーガレージに近接して設ける。
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3.
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なお且つ、階段の踊り場部分から中二階にアクセスできるよう、階段の配置を考える。
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4.
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中二階部分には洗面室と浴室を配置するので、そのスペースが確保できるよう計画する。
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5.
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2階の廊下は、必ず1階のリビングダイニングルーム北側上部に面するよう計画し、トランジットウインドウを設ける。
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6.
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このトランジットウインドウとは別に、北側を向いたハイサイドライトを廊下に面して設け、空気の流れを円滑にする。
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7.
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2階の廊下からリビングダイニングルーム直上に配置される2.5階の居室にアクセス出来る階段を設ける。
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8.
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天井高が約1.5階分の高さとなるリビングダイニングルームは、2階と2.5階の配置を考慮した上で、その形状と位置を設定する※3。
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9.
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リビングダイニングルームは、南側の大開口に対面する壁面をなるべく多く確保し、そこを蓄熱体とするためにレンガ張りとする。
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10.
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全ての居室が南面することとし、北側は水廻りや納戸、書斎等の用途を配置する。
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自由設計を基本とした一つの商品モデルとして、あらゆる敷地条件や顧客ニーズに対してその全てを適用させようとすると、ハードルは高くなろう。
果たして、実際の運用においてどの程度の対応性があったのかということには興味が沸く。
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*引用した図版の出典:積水ハウス
2014.11.22/記 |