この時期、竣工したてのSRC造11階建てワンルームマンションの一室に住むこととなった。
外観は、ダブルグリッドを意識した白色の鋼製フレームがバルコニー側の建物立面全体に取り付き、割肌調の濃灰色タイル張りで仕上げた外壁とのコントラストを明確にした構成となっていた。
住戸内に入ると、玄関から居室までの短い廊下の片側に、ガラリ付きの鋼製折れ戸を設けた床から天井までの収納が四つ連なる。
そのうちの一つは洗濯機置場になっていて、扉を閉めていれば普段は洗濯機を完全に隠すことができ、玄関廻りが雑然となることを回避する配慮がなされていた。
収納量は住戸規模に比して十分。またバルコニーも結構広く、ワンルームマンションとしては仕様が良いという印象。
ところで、ワンルームマンションのプランは概ね二種類ある。
つまり、ミニキッチンが居室内に面するものと廊下部分に独立して設けるパターン。
六番目の家は前者に該当するが、個人的にはあまり好みではない。
当該ワンルームに居住中、生活用品の殆どはまだ五番目の家に置いた状態であり、持ち物が極めて少ないシンプルライフを実践していた。
そんな中にあって、生活感が露呈しがちなキッチンセットの存在は邪魔に思えた。
やはり居室内ではなく廊下側に配置するのが正しいのではないか。
また、ワンルームマンションは狭小であるがゆえにプランや仕様に関して殆ど変わる余地が無い様に見えながら、少なくとも二点について変化している。
一つは、居室内の床仕上げ。
六番目の家はカーペット敷きであった。
上下間住戸の遮音性能確保の観点から、当時のマンションの居室はワンルームやファミリータイプの区別なく、洋室の床仕上げはカーペットというのが常識であった。
実際、住んでいる間に隣戸からの騒音の類いは一切気になることが無かった。
フローリングの遮音性能が高まり、あるいは性能が安定することで集合住宅の居室の床に用いる一般的な仕上げとして扱われるようになるのは、この後暫く経ってからのこととなる。
だから、今現在中古ネット市場に出回っている当該マンションの情報を調べると、フローリング張りに改修されている住戸が散見される。
二点面は水廻りの構成。
六番目の家は、トイレと洗面と浴槽が一体となったいわゆる三点ユニットであったが、当時はこれがスタンダード。
しかし今、これらは分割配置することが一般的だ。
少なくともトイレは確実に独立して設けられている。
当該ワンルームマンションの近傍には都内でも有数の規模を持つアーケード付き商店街が連なり、物価も安くて何でも揃う結構便利な場所であった。
しかし諸々の事情で二年で退去することとなった。