日本の佇まい
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建築の側面
東京都物件14:機能と意匠の融合
規模:地上5階

用途:事務所

写真1:外観
※1
スリーブの金属フードの配置も上下階で統一されていればより完璧でしたか。 四階の一部目地と干渉している箇所については経年における屋内への雨水浸入が懸念されるところ。

規格品のガラスブロックを二行二列並べた小開口を平滑な壁面の中に縦横整形に配置。 その小開口の外周に沿う様に誘発目地を四方に展開。
躯体伸縮に起因して開口四隅に発生するクラックの抑制策としては至極真っ当且つ徹底した目地の入れ方ではあるが、その目地を化粧と見立てて壁面にダブルグリッドを刻み込む。 ガラスブロックは、グリッドの線分の交点に嵌め込まれた形。 そして各階打継目地や柱と壁面取り合い部の誘発目地と共に二層から四層の基準階立面にささやかな表情を作りだす※1

コストを掛けた装飾のための装飾では無い。 セオリーに則った不可欠な目地を巧みに活用した装飾性の付与。 建物が密集する都心部においては見え掛りとなりにくい隣地境界に面した建物側面にも手抜かり無く施された最小限の意匠的配慮だ。
そんな拘りが見て取れるこの側面が、新たに建てられた隣地建物の配棟状況によって一気に都市のオモテ面に顕れることとなった。 写真手前右の白いタイルを張り込んだ集合住宅が、向かって左手の前面道路から十分な後退距離を持って建てられたために、以前から建つ当該建物の側面が露出することとなったのだ。

隣地建物の陰に隠れたままであれば、それはそれでクラック抑制のために機能し経年における建物の品質を保持。 見え掛りに表出すれば意匠として視認可能な要素となって建物の価値向上に僅かながらも寄与する。
健全な側面だ。



2017.07.08/記