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建築の側面
東京都物件10:燃え上がる側壁痕
規模:6階建て

用途:事務所

写真1:外観

二色に塗り分けられた側面。 その大部分はアイボリー系の彩色で、側面の向かって左手と上層部が真っ赤に塗装されている。
元々は全てがアイボリー色で、真っ赤な部分は後で塗り重ねられたものと思われる。 塗り重ねる際、隣接していた建物の側面部分を除いて塗装が施されたのであろう。 従って、側面のアイボリー部分は、もともと隣設して建てられていた建物のアウトラインを示すことになる。 色分けによって、除却された隣接建物のボリュームが保存されたという訳だ。

この色分けの境界は随分と曖昧に仕上げられている。 その色彩と相まって、あたかも揺らめく炎のようだ。 あるいは、炎上する塊のような様態として隣接建物が現存建物の側面に転写されたといった見立ても可能だろうか。

炎の揺らめきの一瞬を固化したかの様な側面が都市のただ中に出現し、そしてその解体除却工事によって文字通り消沈した。

ところでこの物件、写真1の裏側の側面にも隣接建物の痕跡の転写が確認される(写真3)。 アウトラインから想像するに、木造二階建ての看板建築であったのかもしれない。
写真1と異なり、痕跡のエリアはコンクリート素地。 隣接建物との離隔が無かったために、当初から塗装が施されなかったのであろう。
こちら側の色分けの境界部分も、輪郭が曖昧だ。


写真2:境界部分詳細。

写真3:写真1の裏側の側面。
痕跡エリアの左手に、柱の帯筋がかぶり厚さ不足で露出している箇所がある。 隣接建物との離隔不足に起因した施工不良であろう。


2009.04.04/記