日本の佇まい
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建築の側面
東京都物件06:補修痕による表貌
規模:8階建て

用途:事務所

写真1:外観

写真2:遠景
左右を建物で挟まれた更地の奥に「抽象絵画」の壁

建物が除却された後の更地の奥に、あたかもアクションペインティングによる抽象絵画を思わせるような壁面が垣間見えた。 しかもそれは下部3層のみ。 それより上の階の壁面には、平滑で均質な白色のタイルが全面に張られている。

これは、ストリートアーティストが我が活動の場を得たりとゲリラ的に製作に勤しんだ成果という訳ではない。 詳細を見れば、それが様々な補修痕の集積によって形成されたものだということが判る。 だから、そのプロセスにおいて美的なこだわりや価値観が介入する余地は無い。 にもかかわらず、ある種の気分が造り出されているところが面白い。

都市の奥で人知れず生成されていた現代アートにとって、前面建物の解体は「除却」ではなく「除幕」であったという訳だ。 そして前面に建物が再度建てられる迄が展示期間ということになる。
否、変化の激しい都市の中にあってはその期間設定も移ろう。 建物自体の除却による壁面の物理的消去ないしは全面的な修繕工事の実施といった要因が、期間はおろか、それ自体の存続の可否さえ規定する。



2007.05.26/記