日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです
町並み紀行
建築探訪
 
建築外構造物
ニシン漁家建築
北の古民家
住宅メーカーの住宅
間取り逍遥
 
INDEXに戻る
建築の側面
東京都物件04:矩形の浮雲の象嵌
規模:8階建て

用途:事務所

写真1:外観

写真2:
別アングルの外観
左側が正面。
水平に連続する開口部と石張りで仕上げられた事務所建築である。

※1
この四番目の雲の下端から水汚れが幾筋も発生している。 塔屋設けられた斜壁部分の汚れを含んだ水が壁面を伝って滴下するで生じたものあるが、これも降雨現象の転写などと読み解けるだろうか。

コンクリート打放しで構成された事務所建築の側面。
各階に水平打継ぎ目地が並び、右手に小さな換気口が縦一列に並ぶ。 極めて要素の少ない無表情で規則的な側面であるが、その中になぜか三箇所、テクスチュアの異なる矩形の打放し面が散在する。

この部位の生成理由もしくは過程は何か。
もともと開口部があったところを塞いだのだろうか。
そうだとしても、そもそも近接して建物が建っていたので、大きな開口を設けるのは不自然だ。 また、基準階という概念が原則の事務所建築において、ランダムな開口の配列というのも理に適わない。
あるいは、コンクリートの施工不良を補修した箇所なのか。 しかしそれが水平目地の上下をまたぐのも、施工手順を鑑みるとあまり現実的ではない。
ということで発現理由不明の「模様」だ。

その様態は、さしずめコンクリート打放しという人工の空に象嵌された矩形の浮雲といったところか。
そして象嵌された三つの雲の更に上に、ちょうど良いバランスで四番目の雲 − 塔屋が配置されている※1。 あたかも空に浮かぶ実際の雲に同化しようとしているかの様に見えなくもない。
ここはひとつ、建築の側面に象嵌された人工の気象現象が、隣接建物の除却により一瞬の間、都市のオモテ面に影向したとでも読み解くことにしておこう。



2006.10.07/記