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建築の側面
山陽物件01:積層する増築過程
規模:4階建て

用途:店舗+住宅

写真1:外観
この側面には、もう一つの見方がある。
右の本文に書いた増築過程は、恐らくこの建物が立地する商店街の興隆の推移とも同期する。
つまり、通常の町屋の体裁から始まり、商店街の発展に伴う隣近所の変容に合わせてモダンな装いへと道路側ファサードを改修。 更に、業務拡大に対応して上層へと容積を増す。
しかし、発展はそこまでであった。 昨今の消費嗜好の変動に追従出来ず、商店街は衰退。 隣接していた商店も仕舞屋となり、やがて除却。 結果、当該側面が露出することとなった。
側面に顕れた増築過程は、当該建物と街が歩んできた発展の歴史そのものである。 そして同時に、そんな側面が露呈する理由である隣接建物の除却は、街の衰退の顕れでもある。
であるならば、この側面には別のタイトルも付けられる。 自主ルールに則り八文字で表すならば、「発展と衰退の表徴」とでもなろうか。

数度にわたり段階的に実地されたのであろう増築過程が、露呈した地層の如く明快に顕れた側面。

オリジナルの建物は、勾配屋根を伴うモルタルで塗り込められた二階建ての壁面部分と思われる。
中央やや左よりの、グレーの小波鋼板で覆われた箇所は、もともと坪庭であったのだろう。 つまりは、間口に対して奥行きが極めて深い鰻の寝床型の町屋の典型。 その側面方向のボリュームが、きれいに顕れている。
その坪庭部分を小波鋼板で塞いで屋内化。 左右の棟を一体化させた。
向かって右の棟の勾配屋根上部に配置された白壁部分は、この建物の接道側立面に店舗としての表情を与えるために施された看板建築的な設えの側面。 もともと小屋裏部屋の扱いであった勾配屋根部分の空間の拡張も意図された増築であったのではないか。 しかし、その拡張でもまだ空間が足りず、更にその上層に屋階の如く四階が載せられた。

この最上階の左手に設けられた急勾配の屋根は、この階に至るための階段が配置されているのであろうか。 建物側面のスカイラインに動的な表情を与えている。
そして、オリジナルの建物左端二階に増築されたやや明るめの小波鋼板の壁が、この急勾配屋根の下端を受け留める。
オリジナルのモルタル壁と、この小波鋼板の増築部分の境界を跨ぐように設けられたアルミサッシの開口が、なかなか味わい深い。

増築箇所ごとに異なる外装材が用いられているが故に明白なそのプロセス。 果たして、個々の領域がどの様な順序で如何なる理由によって増築されたものなのか。 そんな建物の歴史を、この側面から好き勝手に思い描いてみるのも、なかなか楽しそうだ。



2014.04.12/記