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建築の側面
近畿物件03:アルテミスの影向
規模:地上9階/地下1階

用途:テナントビル
※1

南側のみ接道し三方が隣地境界となった間口が狭く奥行きが深い短冊状の敷地。

人の目に付き易い接道側は、平面プランの合理性確保のため道路に面して配置されたのであろう外部階段を手掛かりに意匠を策定。 狭隘ながらも周囲に埋没せぬ個性的な外観が組み立てられた※1


接道する南側外観。
右手の東側にも、かつては隣地建物がやや間隔をあけて建っていた。

接道しない三方のうち西側及び北側は、隣地建物が離隔を殆ど設けずに立ち上がるため、外壁面は死角とならざるを得ぬ。 一方東側隣地のかつての配棟は、敷地境界に対して少々の余裕が確保され、且つ南側前面道路よりやや後退。 なので若干ながらも計画建物の立面が見え掛かりとなる余地を有していた。

設計者はそこにも手抜かりなく意匠を仕組んだ。 建築制限の斜線によって規定される建物のボリュームを円弧に置換し、外部開口の配置と組み合わせてその立面を策定する。
円弧に因み、建物は「アルテミス」と命名された。

近年になって、隣接建物が除却。 時間貸しの平面駐車場へと土地利用が改められた。 結果、東側立面全体が都市に向けてその姿を顕然。 竣工から約30年を経て、周囲一帯のあらゆる方向からの視認性が確保された。
設計者は、この様な都市の変容をも予期、ないしは意識し、東側こそが館銘に相応しいメインファサードたり得ると捉えて表層をデザインしたのだろうか。
とはいえ、今の在り姿も一時の様相に過ぎぬのかもしれぬ。 隣地に新たな建物が屹立した場合、当該立面はどの様な居住まいをもって都市の風景に納まり得る哉。

設計者についてはいわずもがな。 当該「建築の側面」に別途掲載している「北海道物件13:側面に向けた矜持」と同じである。



 
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2025.06.14/記