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建築の側面
近畿物件02:増殖するポリゴン
規模:地上4階

用途:事務所

写真1:外観

写真2:
補修箇所が上層部に偏在している様子が判る。

濃淡数種のモザイクタイルをびっしりと混ぜ張りした壁面。 均質ながらも味わいのある濃灰色に仕上がったその外装仕上げは、経年劣化で浮きや剥がれが生じ、補修を余儀なくされた。
その補修箇所は元の壁面とは異なる仕上げとなっているため、遠くからの目視においても明白。 張られたタイルの割付けによって規定される矩形メッシュに基づく二次元ポリゴンモデルとなって、壁面の上層部に偏在して不規則に群景をなす。 それはあたかも、壁体天端の更にその上に広がる空に散り散りに浮かぶ雲をデジタル置換して転写したかの如く。 あるいはクリムトのパッチワークの如く乱舞し、既存の平滑な外壁面や規則的に配置された開口部との対比を際立たせている。

修繕方法の詳細は遠目には判別が難しい。 一見、剥離したタイルの除去範囲をモルタル左官補修で均した様に見える。 しかし少々違和感を覚えたのでカメラの望遠でその箇所を拡大して確認してみると、右図の通り。 もとのタイルと同じサイズの白色のタイルで補修範囲の外周をわざわざ縁取りしている。 確かに、数種のタイルの混ぜ張りによるオリジナルの色味を寸分違わず再現することは難しい。 そのため元通りの復旧を断念したと仮定して、替わりの補修方法に縁取りを用いるという仕上げ方法の選択意図やその効果ははかりかねぬ。
ともあれ、タイルの剥落防止のために施されたこの措置が、近い将来再び行われる修繕の際にも同じ様に実施されるならば、更にその範囲をランダムに増殖させて外壁の表情を変容させることとなるのだろう。



2016.12.10/記