日本の佇まい
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建築の側面
北陸物件01:意味と機能の隙間
規模:2階建て

用途:店舗+住居

写真1:外観
※1
この規定を設けた経緯については、雑記帳の2007年9月22日の項に書き記している。


写真2:

タイトルを八文字にするという自主ルール※1に則らなければ、「House with the Cross」とでも名付けたい。 そんな事例である。
同様のタイトルを、「間取り逍遥」のページの戸建物件No.3でも使用している。 違った意味で、この側面事例も「House with the Cross」だ。
「張り付けられた」と書くよりも、「磔られた」と表記したほうが相応しいクロスが、その側面に確認できる。 あるいは、クロスというよりは、「×(バツ)」とも言えようか。

小野瀬順一の著作「日本のかたち縁起」に、日本における「バツ」のデザインに込められた意味性について解説されている。 そこで述べられている言説を幾つか挙げると、「この世と異界の出入りを禁止する記号」であり、「なにか禍々しい呪術的雰囲気を感じさせ」「禁止を意味するデザインに容易に転化する」とある。

では、この物件の「バツ(=クロス)」にはいかなる意味があるのか。 除却されてしまった隣接建物に対し、「私の家は立ち退かないぞ」という抵抗の意思表示か。 あるいは、建物自体の存在の否定か。
もっとも、バツのデザインの本来の意味に則るならば、偏在させた取り付け方などしないだろう。 上下左右に対称配置することで、その形象は強化される。 偏在配置は、意味の弱体化をもたらすだろう。
いや、それ以前に、このクロスはいつ設置されたのか。 隣接建物の除却前か、それとも後か。 それによって意味の在り方も変わろう。
あるいは、形態的意味性を不問にしたとして、果たしてそこにはいかなる機能的整合性が付与されているのか。 耐震補強でないことは明らか。 かといって、表層の小波鋼板を押えているものでもない。

意味にしても機能にしても存在理由不在の巨大な「単なる記号」が、隣接建物の除却によって都市に向けて表出した。



2010.02.06/記