日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです
町並み紀行
建築探訪
 
建築外構造物
ニシン漁家建築
北の古民家
住宅メーカーの住宅
間取り逍遥
 
INDEXに戻る
建築の側面
北海道物件09:店舗表示の可能性
規模:2階建て

用途:店舗

写真1:外観

写真2

ありったけの果実を口の中に頬張り込むだけ頬張り込み、それを隠そうともせずに御満悦の表情を浮かべる動物が、コンクリート造の塀の上にひょっこりと頭をもたげる。 何とも微笑ましくて和やかな雰囲気。 しかし一方で、殊更に強調された剥き出しの鋭い鋸状の歯が、食への飽くなき欲望と生きることへの貪欲さ、そして禍々しいまでの野生の凶暴さをも暗示する。
一見ユルそうに見せておいて、実はおどろおどろしい意味性が見え隠れするこの奥深き絵画は、隣地建物の除却によって遠方からも目立つ存在となった建物側面の外壁を活かしたサイン計画として施されたものなのであろうことは一目瞭然。
勿論、長屋形式のこの建物の一区画で営業される店舗の用途は、青果店。 通りすがりの歩行者の視線を釘付けにするインパクトと、サインとしての明快性といった意味において、極めて秀逸な出来栄えだ。
とはいえ、表現の内容や美術的な洗練度といった点においては、既に紹介している近畿物件No.01の方がより優れているといって良いのであろう。 にも関わらず、近畿物件No.01とは別に当該側面物件をここに挙げた理由。 それは、洗練とは別のユルさ加減も然ることながら、更にこの側面に見受けられるもう一つの要素も含めての判断になる。

絵画のキャンバスとなったこの側面には、少なくも7種類の外装材が用いられている。
列記してみると、まずは片流れ屋根の左側頂部の白色の竪張り鋼板。 その右側に、グレー色のモルタル壁。 その直下に、露呈した垂木や突出する母屋材を挟んで濃いグレー色のモルタル壁が続く。 更に側面右手には、上から順に明るいグレー色の竪張りサイディングと幅の狭い白色の横張りサイディング。 その下に幅の広い横張りサイディング(描かれた右目の辺り)。 そして一番下にリブつきの竪張りサイディング、といった具合。
これは、徐々に実施された増改築において、都度異なる部材を用いた結果生じた状況なのであろう。

増築に伴う側面の拡張により、サイン計画のための巨大なキャンバスが用意された。 そして隣接建物の除却により、そのキャンバスは表現の場としての立ち位置も獲得した。 しかし、パッチワーク状に異種素材が混在するため、並大抵の表現では下地としての壁面に負けてしまう。 一方で、縮退傾向にある地方都市の既存商店街の外れに位置する店舗という状況を、施すサインによって何とか克服したい。
こんな事々が折り重なって、この側面が形成されたのだろう。 その効果は如何に。 幸せたっぷりのこの表情が恒久的に維持されることを願いたい。



2014.10.18/記