日本の佇まい
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建築の側面
北海道物件07:八雲立つ八重屋根
規模:3階建て

用途:店舗+事務所

写真1:外観
※1
度重なる部分的な増築によって、部位ごとに様々な意匠や素材を雑多に纏っていたのかもしれぬ。
それが、前面の敷地で実施された建物の除却と駐車場の整備に合わせて体裁を見繕うべく、外装材の更新のみを実施。 今現在の姿となった可能性もあろう。

市街中心部の商店街の一画。
建物が除却されて平面駐車場が整備された敷地の奥に、隣地建物の背面が露呈していた。

三階部分の右手には、引違いの大きな開口部が二か所穿たれている。 この場所に大開口が集中しているのは、かつて手前に立ちはだかっていたであろう建物の形状に起因するのだろうか。 商業地であるがために建物が密集する状況下で、この部位のみ採光が可能であったのかもしれぬ。
では、その左手に付く開き扉は何か。 今は無用の長物と化したこの建具は、かつてはどの様な機能に供していたのだろう。
あるいは一階部分。
中央やや右手の壁面の窪みに、灯油タンクが違和感なく収まっている。 この窪みの奥が、竣工当初におけるこの立面の外壁ラインであったのかもしれない。
平らであった壁面が、その後、前面の敷地境界線に向かって徐々に増殖するかの如く次々と部分的な増築が繰り返され、複雑な凹凸を形成。 結果、灯油タンク置き場の周囲だけがその増殖に取り残されて窪みとして残ったのではないか。

ということで、個々のディテールを論ってその変容過程を推察してみる愉しみが、この立面にはある。
しかし、この事例において注目すべきは、部分ではなく全体にある。 そう、増築によってもたらされたのであろう凹凸の多い外壁面と、その凸部の天端にいちいち施された屋根の連なりが織りなす様相。 屋根と壁双方がそれぞれ単一の素材によって仕上げられることで、その形態的な特徴が際立つ※1

例えば、壁面全体に施された乾式壁のグレー色を、背後の空と同じ色に置換してみる。 そして、真っ赤な屋根面を白い雲に見立ててみる。
そうすると、秋空にたなびく細切れの雲の連なりの様な、そんな風情を呈している様に見えなくもない。



2012.11.03/記