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建築の側面
北海道物件04:儚き自然との同化
規模:2階建て

用途:店舗+住居

写真1:外観
※1

写真2
外壁の下端部分。 枯れ草とクラックのオーバーレイ。

※2

写真3
写真1の反対側の側面。 こちら側は、小波鋼板によって外壁一面が仕上げられている。

周囲の建物が除却されることで現れた側面という意味では他の事例と同じ条件であるが、別に側面物件として記録しようという意図で写真に収めた訳ではなかった。 近隣にひしめく様に建っていたであろう同規模の建物が根こそぎ除却された都心部の広大な更地の一角で、高層建築に取り囲まれながらも寡黙に建つ木造二階建て家屋という状況に惹かれてカメラを向けただけである。
全面をモルタルで塗り固めた無表情な表層。 唯一設けられた二階の窓の内側には、枯れた植物が放置されたままのプラスチック製の白い植木鉢が幾つも並んでいる様子が確認できる。
苛烈な都市の更新の渦中におかれたこの建物の在りように惹かれるものがあった。

とはいってもそれは個人的なシンパシーの問題であって、それだけではこの「建築の側面」の項に載せる意味は無い。 ここに載せた理由は、後日写真を見ていて気づいた建物の足元廻りの状況にある。
モルタル外壁の下端に、幾筋かのクラックが並んで発生していることが確認できる。 そしてそのクラックの白い筋が、その周囲の枯れ草と妙に同化しているように見える(写真2)。 あるいは、枯れ草の変異体としてのクラックが、モルタル面に示現しているという見立ても可能か。 そして、窓の内側に並べられた植木鉢という人工環境下の枯れ草と、屋外の足元に自生していた枯れ草というのも、何やら不思議な関係である。

廃屋となり除却されるまで僅かとなった儚き物理存在が、その最期にささやかな自然との同化の表情を見せる。 そんな強引な解釈のもとに、無理矢理「側面物件」の一つとして掲載してみたが、やはりそれは個人的な想いでしかないのかも知れない。
半年ほどして再度訪ねたところ、この物件は除却されていて更地一面に夏草が茂っていた。



2007.09.22/記