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建築の側面
北海道物件02:都市の記憶の痕跡
※1
「超芸術トマソン」(赤瀬川源平著:ちくま文庫)参照。
同書に「不動産に付着していて美しく保存されている無用の長物」と定義されている。

※2
トマソン物件のひとつ。
隣接建物の側面に残された除却建物の側面のこと。 何とも不穏なネーミングだ。

除却された建物の痕跡が、隣接建物の側面に何らかの形で付着して遺されている事例。 この現象は既に、トマソン物件※1において原爆タイプ※2と呼称されて数多く言及されている。 しかし、側面物件を取り扱う上で外すことは出来ぬ。

ところで、建築の側面におけるこの現象にも幾つかのパターンがあるようだ。 小樽市内で採集した事例を以下に記載する。

事例1:食い込み型
除却物件の壁面の下見板が、奥の建物のコンクリート面に食い込む形で張り付いて残されている。 また、下見板が剥げ落ちた部分は、その凹凸がコンクリート面に転写されていることも確認できよう。 更には、建物の輪郭も深く刻み込まれている。
なぜ、現存物件に食い込んで除却物件が建っていたのか。 もしかすると、除却された物件の側面を型枠にして現存物件のコンクリート壁面が施工されたのかもしれない。
事例2:彩色型
除却物件の立面が丁寧に隣接建物の側面にペイントされている例。 除却に伴う現存建物側壁の補修のために施されたものであろう。
ペイントエリアの二階の軒先に当たる箇所から垂れるように描かれている不定形な表現は、雨水竪樋の痕跡と思われる。
白一色の彩色が、転写現象の抽象性を高めている。
事例3:異種部材張分け/発錆型
1階部分に、除却建物の輪郭を表すように異なるテクスチュアのトタンが張り分けられている。
よく観ると2階部分も輪郭がうっすらと浮き出ている。 この部分は、トタンの錆の進行度合いの違いにより輪郭が表現されている訳だ。
一つの建物の側面に異なる状態で除却建物が記録されているところが面白い。
事例4:混在型
事例1と2の混在型。
やはり、元々建っていた除却建物のエリアが白一色にペイントされているが、同時に奥の方は屋根の破風板が隣接建物の壁面に付着して残されている。


2006.09.16/記