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建築探訪
伊賀上野観光食堂
所在地:
三重県伊賀市
上野丸之内

写真1:東側外観


伊賀鉄道伊賀線の上野市駅の北側。 坂倉順三が手掛けた伊賀市庁舎と上野西小学校体育館に挟まれた街路を北進すると、上野公園に至る。 更にそのまま園内の通路に沿って歩を進めると、同じく坂倉事務所の設計による上野公園レストハウスが見えてくる。 木々が鬱蒼と生い茂る園内にあって、傘型シェル構造の二枚の屋根スラブによって構成される外観は特異な存在感。
この建物の背後に、当該飲食施設が立地する。

南北に長く東西に短い短冊状のボリュームを持つ建物。 その長辺方向の両端に棟持柱の如く二本組のRC造の柱が屹立(写真3)。 その柱によって、二枚のスラブが支持され、それぞれ屋根と床の機能を担う。
床スラブの下部は崖地。 すなわち建物はピロティ形式を成し、床版は中空に浮く。 ないしは両端の棟持柱によって、高く吊り上げられた状態。 それだけでは構造的に心許無いため、スパン中央に束を設置。 更に後補と思われる鋼製ブレースが束と床版を放射状に連結している(写真1)。
この二枚のスラブの間にスチールサッシ枠を用いたガラス建具を立て、透過性の高い内部空間を形成。 飲食店舗の用途に供している(写真2)。



写真3:建物北西部分
写真2:西側立面

周囲に密生する高木及び崖地という立地条件に阻まれ、あるいはエントランス廻りに施されたこれも後補であろう和風の意匠の背後に隠れ、その全景を目視することは困難。 そこに展開する意匠の特異性や魅力は、見え隠れする各部位から辛うじて価値判断するしかない。
まるでそれは、近傍に立地する観光スポット「伊賀流忍者博物館」の忍者屋敷に凝らされた数々のトラップの如く、自身の存在を消し去り、あるいは身を潜めてそこに建つ。



INDEXに戻る 2018.01.13/記