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建築探訪
世田谷区立学校給食用賀調理場(現,エコプラザ用賀)
所在地:
東京都世田谷区
用賀4-7-1

写真1:南側外観


小中学校の給食の調達方法は主に以下の四点があるのだそうだ。
1.
自校調理方式:
校内に設けられた調理室で給食が作られ、その学校の児童・生徒に提供
2.
親子方式:
一つの小中学校の給食調理室で作った給食を付近の小中学校にも提供
3.
共同調理場方式:
給食センターで作った給食を各校に提供
4.
業者弁当方式:
いわゆるデリバリー方式

※1
区内には、「用賀」「太子堂」「砧南」の3つの給食センターが設けられていた。 このうち、1974年4月開設の太子堂調理場も用賀調理場と類似した屋根形式がより大規模に用いられている。

この建物は、3.の共同調理場方式に対応した施設。 かつて世田谷区内には三箇所に給食センターが設置され※1、区内の小中学校に給食を提供していた。 当該施設はその一つになる。

調理場の自由なレイアウトを可能とするための無柱巨大空間の確保を目的としたのであろうか。 その屋根形態は特異な構造を採る。 つまり、梁間方向に逆円弧のRCスラブを帯状に幾つも掛け渡して連続させたシェル構造。 個々の逆円弧スラブは長辺方向に僅かに離隔が設けられ、その間にフラットスラブを挿入。 いずれも同心曲率のむくりを持たせた推動体とすることで、長大スパンを成立させている。 逆円弧スラブは桁方向の柱梁フレームからオーバーハングして庇となり、連成体による明確な構成要素に基づく外観の印象を強める。 その柱梁フレームのスパンは、屋根スラブのパーツの配列と一致。 逆円弧の水下位置に柱を設け、桁梁と柱の取り合い箇所にはハンチを設定。 アーチを近似したサッシ開口を連ね、屋根スラブの配列のリズムに同期させている。


写真2:南側立面

写真3:内観天井見上げ

屋内に入ると、特徴的な屋根形式がそのまま天井面に現れる。 逆円弧のスラブが織り成すカテナリー曲面の連なり。 その曲面の間のフラットスラブ部分にはトップライトが等間隔に穿たれ、大空間に自然採光をもたらす。

区内の給食の供給形態は、徐々に単独調理方式に移行。 それに伴い、給食センターは縮小。 用賀調理場は廃止され、2006年5月からごみの減量とリサイクルの普及・啓発を目的とした公共施設「エコプラザ用賀」に用途転換されることとなった。 リサイクル啓発施設として、建物そのものもリサイクルされたことになる。



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