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建築探訪
芝学園講堂
所在地:
東京都港区
芝公園3-5-37

建築年:
1966年

写真1:外観


スタジアム建築の観覧席部分を一部ぶった切り、そのまま移設したかのような外観が特徴の建物。
否、考えてみれば、スタジアムも講堂も、そこに集う人々の「観る−観せる」という行為の目的において要求される機能は同じ。 基本的な構造形式は似通っている。 つまり、雛壇上の観客席を如何に効率的に支えるか。 その与件によって基本構造フレームはほぼ決定する。 あとは、その雛壇の下部がロビーや各種サービス用途をレイアウトする空間にあてがわれる。
昨今の事例においては、構造設計に係るエンジニアリングの進歩からその表現領域が広がり、このプレーンな構造形式が単純に露呈することは少なくなった。 より繊細に、より美しく、そしてより個性的に。 そんな意匠と構造の共働の背後に基本フレームは後退し、個々に意を尽くした内外観デザインが繰り広げられる。

しかし、この講堂においてはそれが無い。 竣工時における同時代の多くのスタジアム建築がそうであった様に、基本構造フレームが直截に表現されている。 そしてそれをより強調するかの如く、傾斜した四本の柱がエントランス正面に等間隔に屹立して上部構造を支えると共に、建物正面の設えを成す。
四本の斜め柱は、いずれも上部に向かうに従って見込み寸法が連続的に増える断面構造。 その形態が、力強さを視覚的にもより強固なものとする。
そんな柱に支えられる上部構造が観客席を収めた部分であることは、建物用途とその外観から明白。 背後に向かってスロープ状に落ち込むボリュームが、建物外観に動的でダイナミックな印象を与える。 その見上げスラブ面に縦横に走る梁や背後の柱が織り成す構造体に圧倒されつつ、来訪者は斜め柱の背後に配置されたエントランスから入館することとなる。

作為を排した裸形の構造表現が、時代の嗜好に左右されぬ存在感をこの建物に付与している。 そしてその特徴は、2010年に実施された全面改修においても維持され、現在に至っている。



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2017.05.13/記