日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです |
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建築探訪
ベニア商会(ジューテック)本社ビル |
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所在地:
東京都港区新橋6 建築年: 1962年 設計: 前川國男 規模: 6F/B1F 備考: 2011年除却 |
東側外観 |
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東側全景 |
力強く反り上がるコンクリート素地剥き出しの大庇が間口一杯に取り付き各フロア毎に積層する。 そして、厚手のタイルで仕上げられた両妻の袖壁が大庇を視覚的にバランス良く受け止める。 この基本フレームの中に、窓や柱が適切なプロポーションをもって配置されることで、端正で重厚感のある外観が創り出されている。 外観を特徴づける大庇と袖壁の間は、僅かな離隔が設けられている。 打ち込みタイルとした袖壁と大庇との施工手順を含めた取り合いを考慮したものであろうが、しかしこの様に縁が切られることで陰影が生じ、お互いの納まりがシャープになる。 もしも、両者がくっついていたら野暮ったくなったであろう。
右下の画像は、東側立面の途中階を真正面からとらえたもの。 |
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東側外観
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東側立面
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※1:
接地階ピロティ空間 |
横架材の両端は、建物両妻のタイル張り袖壁の内側に配された柱から突出するもう一つのコンクリート打ち放しの袖壁によって受け止められている。 水平性が構成要素として特徴づけられているように見えるその立面は、一方でこの二重に配された袖壁や柱型による鉛直要素との相乗によって、重厚で彫り深い豊かな表情が創り出されている。 横架材を受け止める袖壁の片面基端は、なだらかな曲面を伴って柱に取り付く。 更に立面に顕れる全ての柱型には、その出隅にR面取りを施工。 加えて、前述のタイル仕上げの両妻袖壁小口や横架材側面等、この立面には大庇の反り以外にも曲面が多彩に用いられている。 彫り深さの中に温雅な表情も醸し出しているのは、それらの形態操作の効果であろう。 接地階は、床から天井までガラス張りとした外壁面を道路境界から後退させることで、狭隘ながらもピロティ状の空間を確保※1。 街に対して中間領域としての庇下空間を提供している。 これは、設計者である前川國男の、モダニズム建築に対する流儀としての拘りであったのかもしれぬ。 |
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当該建物の竣工から二年後、同じ設計者により、同様のデザイン手法を用いた紀伊国屋書店新宿本店が完成している。
より深い奥行をもって積層する大庇は、当該作品以上に彫り深い表情の外観を実現した。 それは、奥行のある敷地与件ゆえに実現したものであろう。 しかし間口が狭隘であること、そして庇そのものの積層状態が主題としてより強く打ち出されたためか、庇以外に立面に施された形態操作は当該建物に比して限られている。 同時期に計画された両作品を対比することで、与件の違いによる手法の多様な展開性を堪能出来る。 当該建物はそんな位置づけも持つ作品であった。 しかし、紀伊国屋書店新宿本店が2017年に東京都選定歴史的建造物に登録され今も書籍を求める来訪者で賑わうのに対し、こちらは2011年に所与の役割を終了。 ひっそりと除却された。 |
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2006.07.08/記
2006.09.02/改訂 2021.05.08/改訂 |