日本の佇まい
国内の様々な建築について徒然に記したサイトです
町並み紀行
建築の側面
建築外構造物
ニシン漁家建築
北の古民家
住宅メーカーの住宅
間取り逍遥
 
INDEXに戻る
建築探訪
酒田市の搭状建物
所在地:
山形県酒田市

全景
上層部外観


※1

背面側外観。
建物背後に隣接する公園にて、まずこの外観が目に留まった。


※2
1989年3月に初見した際には「割烹はら」と名付けられた料理店が営まれていた。

この不思議な居住まいで屹立する建物の存在に気付いたのは、その背後に広がる公園内に移築・保全されている歴史的建造物を訪ねた時だった。 擬洋風の内外観を持つその医院建築を見学していた際、公園の敷地外にこの建物の裏側が垣間見えた※1
公園は日本海に向かって舌状に張り出す高台に位置し、その外縁は急勾配の法面となっている。 その法尻に立地する建物の上層一フロア分が園内の地盤レベルよりも突出する形で視認されるということは、それなりの高さを有する建物。 そしてその壁面には片持ち状に屋外階段が矩折に屋上に向かって取り付く。 何やらただならぬ様態に強く魅かれ、建物正面へと足を運んだ。

それは、和風の木造本棟※2に寄り添うように建つ四階建ての搭状別棟。 その最上階裏手部分が公園側から確認されたことになる。
やや菱形に変形した平面をなす塔状のボリュームには、隅角部にフルーティングを強調した柱型が配置される。 その柱型は、建物頂部のパラペット下端で同じ溝を施した横架材で繋いで三方枠を構成。 建物外形を固める。

その三方枠の上部パラペット天端には、隅角部と中央に配されたRC製支柱に支持される二段の上弦材と竪格子で構成される鋼製手摺があたかも冠の様に巡り、建物の垂直性を強化すると共に頂部の意匠を引き締める。


南側立面見上げ

南西側隅角部

三方枠で囲まれた壁面は、リソイド塗りと思しき外装仕上げに水平目地を等間隔に切っている。 これは、左官の施工性と誘発目地としての役割のほか、石造風の意匠を意図したものであろうか。

その壁面に取り付く二階と三階の小窓は深く面落ちし、外壁の厚みを意識させる。 外周に巡らされた四方枠は、蔵の開口のイメージ。 周囲に付く鋼製枠は、かつては防火戸が取り付けられていた名残かもしれない。
最上階は、雷紋を施した横帯で下階と区画した上で、三連の開口を配置。 下階のそれとは異なり、ペディメントをあしらった洋風のディテールを纏う。 中央の開口は下層と中心軸を揃えて配置され、左右の開口と共にシンメトリーなデザインで頂部を端正に整える。
その西面は、さらに大きな開口。 南面の三連窓と共に、最上川の河口及びその先に広がる日本海への豊かな眺望を享受できるのであろう。

これら開口部の配列から、用途の異なるフロアが積層されている可能性が想定される。 例えば、下部三層は蔵の用途。 そして最上階は蔵座敷的な用途。 来歴は不明だが、色々と推察が愉しめる建築だ。



 
INDEXに戻る
2009.10.03/記
2022.01.15/改訂