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建築探訪
徳島ホール
所在地:
徳島県徳島市
幸町1-6

建築年:
1962年4月

写真1:南東側外観


※1

写真2:
日本ビルヂング外観。 1962年7月竣工。

市内を散策中、この建物の南側立面が目に留まった際の第一印象は、「この手の建物が徳島にも在るんだネ」といった程度。 「この手」というのは、写真1として挙げた画像の通り。 建物の隅角部を曲面とし、水平連続窓と白タイルを積層させた帳壁による立面。

「この手」の外観構成を持つ建物として真っ先に思い浮かぶのは、東京都千代田区大手町の日本ビルヂング※1。 巨大なボリュームで上記立面構成を実現している姿は圧巻ではある。 しかしそれだけのことであって、特に個人的に関心を抱くことは無かった。 その巨大さが却って大味な印象だし、大雑把なサッシ割りがそれを補完する。

そんなことを思いながら、徳島市内でたまたま目に留まったこの建物の外観を南東側から見上げてみる。 するとこちらはそんなに悪くはない。 否、構成要素は同じなのだからそれは枝葉の問題ではあるのだが、その枝葉の差異にこそ興味を引き付けるところがある。
例えばサッシの割り付け。 横長サッシの段窓とすることで、水平連窓の水平性がより強まっている。 隅角部の1/4Rの二等分線上に安易に方立を設けない割り付けも良い。 サッシ上の垂れ壁を淡いブルーグレータイルの縦張り、腰壁を平滑な白色の鋼板パネルとする明確な仕上げの使い分けによる層状構成の強化。 そしてそれらの境界を霧除け庇等の強い水平ラインで見切ることで立面に更なる水平性を与えているところも繊細。
これらは、日本ビルヂングでは見受けられぬディテール。



写真3:
南側立面
写真4:
北側立面

ということで、なかなか良いじゃないかと思いながら建物の北側に回ってみると、状況は一変。 凡庸な立面に肩透かしを食らうこととなる。
鉄道と交差するための架道橋となった交通量の多い幹線道路に面するあまり条件の良くない接道状況ながら、その向こう側には徳島城址を臨む。 屋内からの眺望性を鑑みるならば、こちら側の立面も南側や東側と同様の意匠を展開すべきだったのではなかいか、などと勝手な印象を持つ。 あたかも異なる建物が寄り添って建っているのではないかと思える程に、その表情は異なる。 しかし立面が切り替わる部分にてエキスパンションジョイントで分割された別々の建物という訳でもない。 一体の建物として計画されている。
調べてみると、建物は複合用途で成り立っていた様だ。 「様だ」という言い回しなのは、私が見た時点では既に建物は供用を終えて閉鎖されていたため。 その用途とは、映画館や多目的ホール、そして地元新聞社やその関連会社が入居するオフィス。 立面の使い分けは、そんな異種用途の平断面計画上のレイアウトに逐一対応した結果の現れであったのかもしれぬ。

周囲には市役所庁舎や裁判所、そして文化会館といった公共施設が建ち並ぶ。 そんなロケーションの中に文化発信の拠点を設けることで、シビックセンターとしてのこのエリアのポテンシャル強化に貢献していたのであろう。



2018.12.15/記