日本の佇まい
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建築探訪
ターミナルハイツ24/北24条バスターミナル
所在地:
北海道札幌市東区
北区北23条西4丁目

建築年:
1974年3月

規模:
SRC11F/B2F,96戸
東側立面見上げ
北東側外観


公共交通機関のフリー切符を購入。 普段あまり利用しない路線に乗り、馴染の無い駅で下車。 周辺を徘徊し、何か気になる風景や状況を見つけ出す。
明確な訪問対象を予め定めぬ勝手気儘な小旅行に費やす休日もまた愉し。

札幌市営地下鉄南北線の北24条駅で降車したのも、そんな暇つぶしのつもりだった。 休祝日限定の一日乗車券「ドニチカ切符」を携え市内を巡っていた折、ふと思い立って同駅にて降車。 改札を出ると、地下コンコースに面してバスターミナルの案内表示。 そのサインに従い階段を昇ると、視線の先に徐々にワッフルスラブが見えてくる。
何だか面白そうだゾと思いながら昇り切った場所は、地上一階に位置する路線バスの待合スペース。 南北に長く東西に短い短冊状の屋内化されたやや広めのその場所は、空間を視覚的に分化する大断面の梁型の横断が天井面に一切ない。 ワッフルスラブを構成するリブが縦横に規則的に配されるのみの均質な空間が広がる。 更に長辺方向の一面が建具を介しバスレーンへと視界が抜けるため、低い天井高ながらも圧迫感も無い。
バスレーンには四系統分のバースが公道と並行して一列に並ぶ。 外に出てみると、待機しているバスをも覆う片持ちの庇が大きく張り出す。 つまり、降雨時にも傘をささずに乗降車が可能。 そして厳冬期においても、外部環境の影響を殆ど受けずに地下鉄とバスとをスムーズ且つ快適に乗り換えられる。



一階バスターミナル
乗降バース見上げ

庇の見上げは、連続するアーチとリブを組み合わせが表情を醸す。 庇基端直下の二階壁面にはアーチの間隔と合わせて出窓が並び、商業施設の用途に供している様だ。
公道の向かい側に移動して建物全体を眺めてみると、庇の上には集合住宅のバルコニーが何層も積み重なる。 その構成は、それなりに築年数を経た印象。
駅の開業が1971年12月だから、それに合わせて建設されたのかと思い確認してみると、ややタイムラグがある様だ。 バスターミナルの供用開始が1973年8月。 集合住宅の竣工は左の欄に示した通り。 市営地下鉄の開業は、1972年開催の札幌冬季オリンピック開催に伴う都市インフラ網整備の一環。 まずはその開業を優先させ、閉会後に更に都市交通網の連携強化を図ったといった流れか。
当時は、当該駅が南北線の北端。 そこから先のバス輸送による公共交通網の起点として、そして地域の拠点として、建物規模と相俟って竣工時は威容を誇ったに違いない。


階段室側壁

二階商業施設

屋内待合空間に戻る。
最初に印象に残ったワッフルスラブは、その形態を空間の特質として活かせているとは言えぬ。 リブの下端に無造作に配された照明設備。 そしてその配線が縦横に露出する様は、あたかも設計時に照明計画を失念し施工時に慌てて後付けしたかの如く。 それらへの配慮によって、より空間の固有性を出せたのではないかと惜しまれる。

しかし決して意匠が不在な訳では無い。 床面には小舗石の円形張りの様なパターンでタイルが敷かれ、街路か広場の如く演出。 テラゾーの巾木が、床と壁の取り合い部を引き締めている。 そして階段室周りの側壁には個性的な面の分節や丸窓の配置。
その階段を昇って到る二階の商業フロアは、天井が低く圧迫感があるものの、地域住民の日常生活に寄り添う店舗が中廊下に面して並ぶ。

集合住宅部分は、外観目視の範囲では、南北両妻に共用階段とエレベーターを配置。 西面に通した屋内共用廊下で双方の垂直動線を繋ぎ各住戸へのアクセス経路とする片廊下形式。 上部二層の東側バルコニー面がセットバックし、基壇としての低層部二フロアと共に外観に変化を与えている。

東側立面端部処理

各住戸東側バルコニー面の見上げには、乗降バース直上の大庇に施されたアーチと同様の形態処理。 各層水平方向に規則的に連続するそのパターンは、建物南北両端に至ってなおその先に伸び続けようとするところを一旦切断したかの如く。 それはあたかも、不可視の地中を貫く地下鉄軌道が規定する南北方向の都市軸を地上に視覚化した様に見えなくもない。

気儘な都市徘徊の折に接した、ちょっと気になる佇まい。



 
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2025.05.17/記