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建築探訪
鈴木興産ビル
所在地:
北海道札幌市
中央区南2条西7丁目2
建築年:
1970年11月

北西側外観

札幌市中心部のアーケード街「狸小路」を散策中、この建物が目に留まった。 小路に面していた店舗が除却され跡地が駐車場に転用されたため、その背後に位置する当該建物への視線が抜けるようになったのだ。

下層二階を基壇として扱い、その上に堂々とした立面で構成された上層四層が載る。 上層各層の西側立面にはバルコニーが片持ち形式で取り付く。 下層から上層に向かうに従いバルコニーの奥行きが減ずる。 それに合わせて両端に配された袖壁の出幅も連続的に低減し、全景に安定感を与える。 バルコニーを支持する片持ち梁は、中央のスパンのみ二本の吹き寄せとし、それ以外は一本。 更にその先端は、バルコニーの鼻先よりもやや突出させて、これも存在感と安定感と、そして規則正しいリズム感を立面に与える。 バルコニー手摺はアルミ製の竪格子と躯体手摺をスパンごとに交互に配置。 また、両袖のスパンのみ微細に斜めに張り出すことでシンメトリーな全体像を強化している。 屋上部分も、恐らくは手摺兼用であろうパラペットが分厚く廻ることで頂部が力強く引き締められている。



狸小路側から眺めた
南西側外観
エントランス廻り
※1

第一ユーカラハイツ南東側外観

基壇としての下層二層には、事務所や店舗等の非住宅用途がテナントとして入る。 上層四層も、外観目視では集合住宅の様に見えるが、現況は同様に非住宅用途が各区画に入居している。
立地条件を鑑みれば自然な供用状況ではあるが、竣工して間もない頃の上層四層は1フロア当たり7住戸を収めた集合住宅であったことが往時の住宅地図で確認出来る。 すなわち、下駄履き集合住宅として計画された建物であった。

上層四層の外観に対しては既視を覚える。 そう、この「建築探訪」のページで別途取り上げている同市豊平区に立地する集合住宅「第一ユーカラハイツ」※1だ。 同じく上層に向かうに従いバルコニーの奥行きや袖壁の出幅を低減させることで得られる安定感。 そして分厚いパラペットによる堂々とした外観の生成等、共通の要素が見い出せる。

既視感が気になり、もう少し近くから外観を確認してみようと、狸小路より一本北側に並走する南2条通りに移動する。 そちら側(冒頭の画像側)が、当該建物の前面道路。 接道する北側妻面も独特な形状の躯体手摺が各層に取り付き、その直下のエントランス庇は大きく弧を描いてそそり立つ。 これまた堂々としたもの。
そのエントランスの脇に掲げられた館名板を見て、既視を覚えた理由に納得する。 館名に表記される「鈴木興産」は、第一ユーカラハイツの事業者だ。 そして建設された時期も当該建物とほぼ同じ。 意匠に関わる往時の同社の嗜好が、双方の建物の共通性として顕れたのかもしれぬ。

 
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2023.10.14/記