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建築探訪
岡ビル

所在地:
岡山県岡山市
北区野田屋町1-3

竣工:
1951年6月30日

設計:
久米建築事務所

施工:
大林組


写真1:南西側外観

岡山駅前界隈を散策中、市内中心部を南北に流れる西川用水沿いに整備された緑道公園に面するこの建物が目に留まった。 塔屋には、大きく「岡ビル」と書かれた看板が屹立する。
一階を商業施設とし、二階から四階に集合住宅が積層する複合建築。 緑道側のファサードは、二階以上のフロアの殆どにグリッドデザインを展開。 やや時代掛かった雰囲気はあるものの、適切にメンテナンスが施されており、くたびれた印象は無い。

建物に近づいてみると、グリッドはところどころ背後に透けていて、見上げの視線においてその向こう側に空が見通せる。
どういった建物構成なのかと、前面道路から暫し全景を観察してみると、どうやらグリッド部分は渡り廊下。 その背後に板状の住棟が四棟、等分の離隔を確保しながら平行に配棟され、この渡り廊下で結ばれている。 背後に透けている箇所は、住棟どうしの離隔部分だ。
各住棟には18の住戸が入る。 いずれも南面し、隣棟間隔によって日照が確保されている。

敷地いっぱいに広がる一階の商業施設を基壇とし、その屋根スラブを人工地盤に見立てて住棟を並列配置する構成。 その全体像を調律する役割と商業施設としての外観の設えを、渡り廊下に施されたグリッドデザインが担う。 但し、そのグリッドが施されているのは緑道に面する西側ファサードのみだ。

写真2:西側立面
写真3:一階内観

西側立面の南端(写真1の右手前側)の壁面には、鰆をモチーフにした巨大な金属製オブジェが取り付く。 岡山県立大学デザイン学部のデザインにより2012年に製作されたものである旨、館内に表示されている。 生鮮食料品を扱う店舗が多い一階商業施設に呼応した作品であろう。

その一階の商業施設と二階以上の住棟へのアクセス動線は完全に分離されている。 商業施設部分は、東西南北それぞれに出入口が複数箇所設けられており、個々の出入り口から一直線に延びる通路によって屋内を格子状に区画(写真3)。 それぞれの区画に複数の店舗が連なり、屋内型市場の体裁を成す。
それは、建物が立地する市内中心部に広く形成される比較的整形な格子状の街路を屋内に取り込み連続させようと意図したものなのかもしれぬ。 あるいはそんな屋内と周囲の様態に呼応して、西側ファサードのグリッドデザインが仕組まれたという見立ても可能であろうか。

2018.04.28/記