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建築探訪
大川端リバーシティ21
所在地:
東京都中央区佃

建築年:
1986年〜2000年

写真1:遠景


佃島の北側、永代橋から隅田川越しに臨む超高層マンション群。 この光景は、東京が水都である(あるいは、かつてそうであった)ことを改めて認識させられる。 と同時に、現代のこの都市における好ましい景観の在り方を端的に表象したものとも受け止められよう。
石川島播磨重工業の工場跡地という纏まった広大な敷地に忽然と姿を顕わし、あたかも水面に浮かぶが如く屹立するタワーマンションの群景。 そこには、国内の面開発が往々にして陥りがちな、景観的なまとまりに著しく欠けたバラバラな巨大建築の林立という状況は見受けられぬ。 個々に高さやデザインが異なりつつも統一された全体像が形成されている点において、他の多くの大規模再開発のそれと一線を画している。

私がこの地の建物を初めて実見したのは1990年の夏。 当時の状況は下の写真の通り。 写真1とは逆の方向から撮ったものになる。
まだ下町としての風情を色濃く残していたエリアの向こう側に唐突に超高層マンションが一本そそり立つ。 その光景は当時マスコミにも盛んに取り上げられ、どちらかというと否定的なニュアンスで報道されていたという印象がある。 確かに新旧の断絶著しいとても奇異な風景ではあったが、同時に極めて今日的な東京の(あるいは日本的な)様態であるとも思えた。
但し、そんなギャップを愛でていられたのも束の間。 次々とタワーマンションが建設され、そして下町的な既存エリアの建物の更新も進行。 その差異は希薄なものとなりつつある。

そんな大川端リバーシティ21の景観の居住まいは、佃島の近傍一帯にも影響を及ぼしつつある。 タワー型の建物が隅田川沿いに屹立する風景の拡張。 その景観形成を後押しすべく、東京都が策定する景観法の中にも「隅田川景観基本軸」という項が定められ、板状箱型ではなくスレンダーな塔状建物による川辺の景観づくりを推し進める施策が組まれている。 近い将来の、否、今現在確実に進行中の都市の風景の変容あるいは醸成に向けた潮流における先導的な立ち位置に在る現代の“集落”。 それが、この集合住宅群なのであろう。



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