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建築探訪
森之宮団地
所在地:
大阪府大阪市
城東区森之宮1

建築年:
1967〜1968年

写真1


建物の長軸を南北に向けた中廊下形式の板状高層住棟を、やや位置を前後させつつ平行に三棟配置。 それらと直交するようにその北側に片廊下形式の住棟を二棟並べている。
個々の棟間距離は十分な余裕が確保されており、全住戸への日照確保や、あるいは対面する住棟同士のプライバシーの確保に配慮。 そして棟間の足元廻りには、豊かな共用外構スペースが高層住棟に囲われるように設けられ、ある種の都市的スケールとも言うべき雰囲気を創出している。
中廊下形式の三棟と片廊下形式の二棟は、当然全形のボリューム感に違いが生じているものの、各階各スパンの柱と梁による構造フレーム内を全て腰壁付きアルミサッシ窓とする共通のファサードによって、団地全体の統一感を維持している。
しかしながら、その開口廻りに取り付くディテールは双方の間で大きく異なっている。 片廊下形式の住棟の方は開口部直上に小庇が付くのみであるが、中廊下形式の住棟の方は、日除け庇の機能を意図したと思われる特異な形態の部材が立面全体を埋め尽くす。 この意匠が、団地の佇まいに固有性を与えているのと同時に、極めて興味深いディテールでもある。


写真2:団地内の住棟配置
手前の左右二棟が、南北方向に長軸を持つ中廊下形式の3号棟と4号棟。 背後に直交するように1号棟と2号棟。手前右手4号棟の更に右側に5号棟が配棟される。 住棟間の足元には、豊かな外構が形成されている。
写真3:4号棟西側立面
写真1の東側立面と比較すると、庇のディテールが微妙に異なる。
そのパーツは、各住戸の桁梁から突出する三本の片持ち小梁の先端を横断する様に箱状の焼付け鋼板を取り付けた構造となっている。
更に、西側と東側の立面で、その納まりが微妙に異なる。 東側は上記の通りであるが、西面のそれには、箱状焼付け鋼板部材の下部に更に“A”の字を横倒しにした様な断面形状のアルミ形材を用いた横桟が二本ぶらさがっている。
この使い分けの背景は判らぬ。 しかし、より苛烈な西日による室内温熱環境への影響緩和を鑑みた措置である可能性はあろう。



写真4:4号棟の一階廻り
大きくピロティ空間がとられ、奥の方に遊具やベンチが配置されている。

写真5:3号棟東側立面上部。
基準階とは異なる意匠を屋上階に与えることで頂部を引き締めると共に、ピロティ空間や強要施設あてがった一階部分と組み合わせて明快な三層構成の立面としている。

この立面には、他にも空調室外機を取り付けるためのスチールフレームや、空調ドレン排水用のものと思われるステンレス配管が外観に規則的に並ぶ。 日除け庇(と、この場では位置付けておく)を含めたこれらの立面構成要素に拠って、通常のバルコニーや共用廊下が連続して廻る平準的な集合住宅とは趣きを異にする外観を実現。 個性的で深みのあるファサードが成り立っている。

基準階部分のこの意匠とは別に、一階部分にはピロティが大きく取られ、各棟にアクセスするための敷地内動線を確保。 棟によってはこのピロティ部分にプレイロットを設け、降雨時の遊びの場を提供している。
更に屋上には、建物一層分にあたる壁柱と梁に拠るフレームが外周に廻され、そのフレーム内に竪格子を巡らせて頂部としての意匠を付与。 基壇、中層部、頂部という明確な三層構成をファサードに与えている。

1960年代後半に整備された団地であるが、鉄骨ブレース付加等による耐震補強や各棟共用エントランス廻りを木質感を基調とした設えに改修する等、建物を維持するための適切な管理が施されている。



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