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建築探訪
西長堀アパート
所在地:
大阪府大阪市
西区北堀江4-9-7

建築年:
1958年

設計:
日本住宅公団

施工:
鹿島建設

構造:
RC11F/B1F

写真1:北側立面見上げ


竪のストライプが整然と並ぶファサードが連綿と、そして永遠に続くが如き板状構造体。 そんな立面が、街路の一ブロック全面に堂々と屹立する。
ストライプ部分は縦長のFixと外倒しの段窓となっており、屋内への通風と採光の用途に供している。 この立面に面した屋内は、各住戸へのアクセス経路としての共用廊下。 ありふれた型廊下形式の住棟が、この立面の意匠により個性あふれる外観へと昇華されている。
とはいえ、その特徴的な立面は、この北側共用廊下面のみ。 他の三方は、高層団地としての凡庸な構成に留まる。
ここで「凡庸」とは肯定的な意味を持つ。 当該団地は、かつて東京の晴海に存在した晴海団地高層アパートと共に、日本住宅公団が企図した高層集合住宅の最初期事例。 その先駆例が、その後都市部において怒涛の如く展開する高層集合住宅に広く採用されることとなるファサードを既に実現している。 つまりは、先駆例が凡庸なものと成り得た完成度の高さ。 その様な位置づけにおいて、北側以外の立面も極めて貴重な意匠だ。

しかしながら、やはり目を引くのは北側立面。
その特徴である竪ストライプの詳細を見ると、開口部がスラブによって分断される箇所が、やや面落ちさせてエンジ色に塗装されている。 竣工当初からのものか否かは判らぬが、ポイントカラーとして、リズミカルなパターンをアイボリー色の大壁面に添える。


写真2:北西側外観
写真3:北側立面見上げ

更に、ランダムに開放される外開き窓が、規則正しいファサードに変化をもたらすことで、単なるストライプの連続体という以上の意匠性をこの立面に付与。
そんな壁面は、しかし一階部分は異なっている。 孔空きブロックを多用した構成によって、二階以上の上層とは敢えて異なる意匠を採用。 その対比によって、二層目以上の巨大なストライプの壁面を地面から切り離すデザイン的位置づけを担っている。
そして、同様に孔空きブロックを用いつつ、更に階下の直線的な構成とは異なる微細な反りを伴った壁面を伴うペントハウスを頂部に載冠することで、全体像が絶妙に引き締められている。

北側前面道路の向かいに中高層の建物が林立するため、その全景を遠望することは困難だ。
しかし竣工当時は、今は埋め立てられ幹線道路と化してしまった長堀川に、このファサードが面していた。 その威容が水面に映える美しい景観を創出。 そして夕刻ともなれば、共用廊下の灯りがストライプ状の開口部から外部に滲み出し、昼間とは異なる佇まいを見せる。
巨大な建築照明としてのその情景は、今でも北側前面道路から仰ぎ見ることで堪能することが可能だ。



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