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建築探訪
住友病院清泉寮
所在地:
大阪市西区
京町堀6-23

建築年:
1976年3月

写真1


大阪市西区の靱公園に面して白亜の建物がそそりたつ。 そのファサードのほぼ全面に施された市松模様が鮮烈だ。
ちなみに、写真1の裏面にあたる北側立面も同様のデザインが展開する。 また、建物両端に共用の階段室を収めたと思われるボリュームも配置されている。
ということで、建物そのものの内部構成は、外観目視からもある程度想定が可能だ。 例えば、立面のほぼ中央において一旦市松のパターンが途切れるのは、そこがこの建物のサービス用途を収めたコアであるためであろう。 つまり、エレベーターや階段室を収めた垂直動線及び共用施設が、この個所に集中する。 そしてそのコア部分から建物の両翼に中廊下が伸びる。 更にその廊下に面して両側に居室が並び、廊下終端にも共用階段室が取りつく。

きわめて明瞭な内部構成が想定されながら、市松模様のファサードによって外観に個性が彩られていることは言うまでもない。 市松模様は、出部屋とバルコニーを交互に並べることで成立している。
以下、出部屋部分を凸部、バルコニー部分を凹部と呼ぶ。 この市松をシャープなものとするために、ディテールにも意が払われている。 外観を眺めていて気が付いた配慮事項を以下に幾つか挙げてみたい。



写真2:南側立面
写真3:バルコニー部分詳細

まず凸部は、その四隅がお互いに微妙な離隔を設けて配置されている。 もしも隅部が接していたら、市松模様が野暮ったいものとなったことであろう。
そしてその離隔部分の奥に雨水排水竪管を収めてあまり目立たないようにしている。 凹部の手摺もガラス手摺とすることで、その存在を消している。 この二つの要素を外観から消し去ることも、凹凸のみの構成を際立たせる配慮として有効だ。
更に、凸部正面の壁面上下端に大きく面取りが施されている。 これも、凸部のエッジを際立たせることに貢献しているとみなせそうだ。

この市松模様によって、一般的な集合住宅が往々にして陥りがちな住戸の単純な積層様態が外観に露呈することを回避している。
その市松を成立させるための各住戸単位のプランがどんな構成となっているのか。 そしてその住戸単位がどの様に積層しているのか、興味が沸く。



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