日本の佇まい
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建築探訪
目黒柿の木坂アビタシオン
所在地:
東京都目黒区
東が丘1-5-5

建築年:
1960年12月

設計:
協立建築設計事務所

施工:
フジタ

規模:
地下1階地上7階
35戸

写真1


※1

写真2:
エレベーターシャフトの塔屋部分。

東急東横線学芸大駅を下車し、駒沢通りを西の方面に数刻歩き続けると、やがて変った意匠の塔屋※1を載せた建物が見えてくる。 何だろう?と思い近傍に向うと、敷地境界に沿って擬灰岩系の石材を高く積んだ塀に囲われた一画が現れる。

その塀の向こう側には、こんもりとした豊かな植栽。 そしてその背後に、ファサードの殆どを白色に塗りこめた中層建築物がそそり立ち、樹々とのコントラストを強烈に演出する。 更にそこに降り注ぐたっぷりの陽光。
盛夏の昼下がりに通り沿いから見上げるその佇まいは、コルビュジエが理想都市の必須項目として掲げた「太陽・緑・空間」というキーワードを想起させる。

敷地の南東側に対して住棟を雁行配置し、それによって交差点に向けてまとまった緑地を確保する。 そして各住戸のバルコニー手摺にも、コンクリート製のプランターを建築工事にて設え、壁面緑化を誘導。
年月を経て豊かに育った植栽が、地上面と鉛直面に折り重なる。



写真3:
写真4:
※2

写真5:
バルコニー手摺のプランター詳細
近年、建物緑化による環境配慮が盛んに語られるようになった。 しかしこの集合住宅は、その遥か以前から既にそれを実践し、そして継続している。
時間の堆積を有する分、その醸成の塩梅は昨今の環境配慮型事例として話題に挙がる建築作品の出来栄えを軽く受け流すかの如き余裕の風貌。
その主役であり、そして外観デザインを特徴付けるポイントは、やはりバルコニー手摺に設けられたプランターであろう※2。 四本の片持ち梁により支持されたコンクリート製のボックス。 そのキャンティレバーの連なりは、垂木か、あるいは出桁を支える肘木を思わせる。
そこはかとなく和感を帯びている様にも解釈可能なそのデザインは、コンクリート造建物の表現手法としての時代性も感じさせる。 そして、各住戸に連続する同じ規格のディテールと、そこに思い思いに植えられた緑が、外観に深みのある表情を醸し出す。


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