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建築探訪
海岸町市営団地29 室ビル
所在地:
北海道室蘭市
海岸町3-1-3

規模:
店舗;6区画
住戸;12戸

写真1



写真4

裏面の外観。 薄い板状のボリュームであることが判る。

室蘭市の港湾沿いに通る国道699号、通称「港大通り」。 その道路が緩やかにカーブする場所に面して建つ。
奥行きが浅く、間口が広い板状のその建物は、道路に合せて同心円を描くが如く、カーブの微妙な曲率に近似する多面体で構成。
一階に店舗を6区画、二,三階にそれぞれ6戸ずつの住戸を配置した、いわゆるゲタ履きの集合住宅だ。
道路に面した一階の店舗部分は、その用途上、大きく穿った開口を並べることで、街に対して開かれた印象を醸し出す。 対して、二階以上の住戸部分は、概ね同じ規格の窓が無機的に並ぶのみ。 途上に段を違えて配置される窓は、各住戸にアクセスする階段室部分に穿たれたもの(写真2)。 この配置によって、独特のリズム感を出している。
恐らくは機能的要請のみに従って設けられたのであろうこれらの開口部の配列。 そんな構成のファサードが道路沿いに建つ様態は、その前面を頻繁に行き交う車が織りなすスピード感に、妙に呼応している。

窓の配列等から類推すると、この集合住宅は、いわゆる階段室型と片廊下型の併用で構成されているようだ。
建物正面向って左側半分の住戸が、階段室によってアクセスする方式。 右側半分の住戸が内部片廊下によるアクセス形式。



写真2:
階段室型部分のファサード。
中央の段違いの小窓部分が階段室。二,三階の住戸へは、この階段室からアクセスする。しかし、地上部の階段室の出入り口は板で塞がれて進入不可。 その一階部分は店舗のため、開口部が大きく穿たれている。
写真3:
写真1の逆側から観た外観。
こちら側には、写真2の様な段違いの小開口を伴う階段室が見受けられない。 替わって、裏手に屋内鉄砲階段と内部廊下が配置され、そこから各住戸にアクセスする片廊下型が採用されている。

道路に沿って長辺を向ける短冊形の奥行きの浅い敷地与件の中で、効率的に住戸を配列するために、この様な変則的な計画が採用されたのであろう。

建築年は今のところ不明であるが、1975年には既に現存していたことまでは調べられた。 それなりの年月を経た建物であるためか、無人の住戸が多く、店舗も全てが未入居。 新規入居募集も行っていない様子であった。 私が訪ねた時点では、写真でも判る通り、幾つかある屋内への出入り口はその殆どが板で塞がれて進入禁止となっていた。 従って屋内の状況を確認することは出来ない。
しかし、外観から内部構成を想像することが楽しい建物である。



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