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建築探訪
大津柳が崎浄水場水質試験所
所在地:
滋賀県大津市
柳が崎6-1

建築年:
1965年

設計:
川崎清/
京都大学川崎研究室

写真1:外観


十字型水平断面をもつ柱が、建物の正面にあたる妻側外壁の前面左右に二本立ち上がる。 上部に行くに従って断面が連続的に逓減するその形状は、いかにも堂々と屹立するといった安定感があり、尚且つその直上に載る巨大な梁をしっかりと支えている。
この柱は、裏側の妻面にも同様に二本立つ。 梁は、この表と裏の柱を繋ぐ様に桁方向に平行に架構され、建物を覆う屋根スラブを支持する。
屋根スラブには、大梁と直交方向に等間隔にリブが設けられており、長手方向の軒先にその断面が規則的に並ぶ。 その配列は、垂木か、あるいは腕木の連なりを連想させる。

建物を成り立たせる構造のうち、十字柱と梁、そして屋根スラブによって構成される基本フレームは、それ自体で完結することが目論まれていた様だ。 そのフレームの下に形づくられた建物本体は、このフレームとは構造的に分化されている。 そのことは、屋根スラブと、その下に設定された外壁上端の間にガラスを嵌め込んだ鋼製フレームによる帯状の帳壁が挿入されていることで明白だ(写真3)
つまり、形式的には、柱・梁・屋根スラブで構成されるフレームの下、いかなる建物のプランニングも可能であろう。



写真2
南側立面
写真3
隅角廻り詳細
外壁上端と屋根スラブの間はガラス建具で縁が切られており、双方が構造的に独立していることが判る。

図版を確認すると、実際には十字柱はもう一組、大梁の中央に配置されている。 さすがに、表から裏までを無柱でスパンを飛ばすことは現実的ではなかったようだ。 つまり、建物本体内部にも屋根を支える柱があることになるが、そのことによって構造的な分化はやや曖昧となる。
しかし、両者を独立して成立させようという考え方によって作り出された建物そのものの個性や魅力は決して減じない。

この特異な構造形式は、浄水場の中心施設として何らかの高度なフレキシビリティが求められたことへの対応であったのかもしれぬ。
いずれにせよ、その形式によってもたらされた外観は、あたかも水辺に立ち上がる神殿の如くといったところ。 建物の前面に配置された広大な配水池、あるいはその先に広がる琵琶湖という圧倒的な水景に拮抗する端正で力強い意匠が構築されている。



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2013.02.09/記