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建築探訪
栃木県立図書館
所在地:
栃木県宇都宮市
塙田1-3-23

建築年:
1971年3月6日

設計:
栃木県立図書館設計研究会

施工:
戸田建設

規模:
5319.62平米

写真1:外観


宇都宮市内の塙田に栃木県庁舎が設置された歴史は古い。 しかしかつての庁舎は、今現在の施設群の整備に伴い完膚無きまでに粛清された。
佐藤功一設計による昭和13年竣工の旧本庁舎(現、栃木県庁舎昭和館)は、曳家によって敷地の片隅に追いやられた上に、配棟の関係からか、建物両翼を切断・除去されたいびつなプロポーションの無残な姿を晒している。 更に、大高正人設計の栃木県議会議事堂も取り壊され、空疎な芝生広場に取って代わられた。
今現在の庁舎施設は、敷地南側の“県庁前通り”から十分に引きをとった奥の方に群体を成す。 更に、その背後に控える栃木県行政警察合同庁舎も含め、1990年代半ばから2007年頃の間に整備されたこれらの建物は、いずれも日建設計の作品。 周囲の町並みを睥睨する圧倒的な威圧感を持って鎮座ましましている。

そんな県庁施設の東側に近接してこの図書館が位置する。
県庁の背後に広がる八幡山から連なる起伏に寄り添うように建てられており、その前面道路はやや急な勾配を伴う。 その坂道に面して図書館のエントランスアプローチがあるが、その殆どが階段。 従って、アクセスする際は、外観を仰ぎ見るようにしてその階段を昇ることとなる。
とはいえ、県庁舎施設の様な威圧感を受けることは無い。 それは例えば、建物ボリュームが適度に分節されていること。 そして全ての開口部に取り付けられたRC造のバルコニー手摺や日射遮蔽物の意匠等によってもたらされる印象なのであろう。
これらの外装パーツは、フロアごと、あるいは部位ごと、更には開口の形状ごとに異なる意匠が施されており、変化に富んだ彫り深い表情を外観に与えている。



写真2:
南側立面
写真3:
エントランス廻り

外観を見上げつつ、息せき昇り詰めてようやくエントランスに至る。
しかし、屋内に入ると正面にまた階段が構えている。 吹抜けを伴うその階段を昇る際には、めくるめくように次々と館内各階の諸室が眼前に立ち現れ、なかなか面白い。
といっても、各スペースへのアクセスは、この階段を利用した上下移動が基本となる。 動線的には健脚を求められる面が無きにしも非ず。 バリアフリーが金科玉条の如く叫ばれる昨今においては、なかなかに評価が微妙なところ。
しかしそれは、高低差のある敷地条件の影響もあろう。 その与件を逆手にとった魅力的で個性的な内観構成という見方もあり得る。

同図書館は、2011年2月より耐震改修工事に着手。 2013年2月にリニューアルオープンした。
その工事を実施するに当たっては、建替えか改修かの議論があったらしい。 同じ公共施設であり、そしてほぼ同じ時期に竣工した近傍の旧栃木県議会議事堂が建て替えに伴い姿を消した一方、当該図書館が改修によって延命された背景は何なのだろう。 図書館を後にして再び県庁の前を通った際、旧議事堂跡地の芝生広場を眺めながら、そんなことを想う。



 
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2014.09.20/記