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建築探訪:オリエンタルモーター豊四季事業所事務棟
所在地:
千葉県柏市
篠籠田1400

建築年:
1968年4月

設計:
TAS建築事務所
福永建築設計事務所

施工:
大林組

南東側外観

仕事で打合せに向かう途上、その逆方向に当該建物が遠望された。 その外観が気になって仕事のことなど半ばそれ以上は上の空。 打合せを終えて最寄り駅に戻る途上、同行者達と別れてこの建物を目指す。
周囲はニ階若しくは三階建程度の住宅や商業施設が混在する街並み。 そこから突出する形で当該建物が見えるから、道なりに目指せば辿り着く筈。 しかしそれがなかなか叶わぬ。 途上の街路は、スプロールによって生成されたと思しき無秩序な敷設状況。 近道と思って分け入った道路は途中で行き止まりとなり、あるいは別の方向へと伸びる。
何度も来た道を引き返しながら、漸く一本の袋小路の先に当該建物の正面出入り口へと辿り着く。

しかし、接道面は大型のスライド門扉で閉ざされている。
門扉の左手に守衛所と思しき平屋建ての棟。 そして正面奥には袋小路から続く敷地内車路が伸び、アイキャッチとして社章と社名を大きく掲げた壁面が三本の旗ポールを従えて記念碑の如く堂々と立ち上がる。 どうやら精密機器の研究開発及び製造を担う当企業の拠点的な施設の様だ。 敷地は相当の奥行を持ち、その「記念碑」の背後に幾つもの棟が奥へ奥へと建ち並ぶ。
そんな敷地内の手前左手、守衛所と思しき建物の向こう側に、最初に目に留まった当該事務棟が位置する。

南西側外観
南側正門周囲
門扉の手前から、事務棟を暫し眺める。
各面、隅角部を避けて外表に柱を配し各層のスラブを支える。 いずれのフロアも柱を勝たせてスラブと取り合わせ、更にはパラペットよりも高くその天端を突出。 柱が大地にしっかりと根差し、天空に向け力強く屹立する様が各立面に顕れ、塔状建物の垂直性を強化する。
五層目のピロティ状部分見上げの目視にて、床版がワッフルスラブだと確認出来る。 その明確かつ力強い構造フレームの中に各層の用途に応じて帳壁が設置され、外観に変化を与える。
更に向かって左手(西側)に、各層を連絡する垂直動線を納めた壁式構造のコアが接続し全景を構成。 敷地内の求心的な施設としての佇まいを成す。
※1
守衛所外観

一方、手前の守衛所※1は、反りを設けた曲面の屋根が事務棟と明確な対比を醸す。 敷地外からの視線において、それは裏面に当たるのだろう。 敷地内にて正面側、即ち事務棟と対峙する側の立面も眺めてみたいと思うが、それは叶わず。

袋小路末端の僅かな接道面から眺められる範囲で取り敢えずの建物鑑賞に興じ、機会あれば再訪をと思いつつ帰路に就く。
それから幾年月。 いつの間にか忘却に付してしまっていた当該建物について、建築専門誌のバックナンバーに載る小さな記事にて再見する。 左上に載せた建物概要は、その記事に拠っている。
改めて訪ねてみようかと思ったが、当該施設は既に別の場所に移転。 跡地は戸建て住宅地に変わっていた。 袋小路に接続する道路が8の字型に新設され分譲地が並ぶ。 それらの敷地と近傍の幹線道路を結ぶのは既設の袋小路のみ。 スプロールが更に増殖していた。



 
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参考文献:
新建築1968年10月号

2025.10.18/記