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建築探訪:東京ベイ信用金庫本店
所在地:
千葉県市川市
市川1-23-28

建築年:
1960年2月

南東側外観

接道する東側立面を見上げる。
微細な“転び”が取られた壁体が安定感を醸す。 そこに配された外部開口は、いずれもダキが深く取られ、壁の厚みを視認させる。 否、むしろそれは壁というよりも一枚の巨大な岩塊。 開口は、その岩塊の表層を削孔して生成されたかの如く。 そこに嵌め込まれた建具を構成するスチール製の障子断面も骨太。 そんな重厚感漲る立面の上部に分厚い庇が張り出し、更には最上層が積み重なる。
建物側面に視線を移してみても、施された形態操作は同様。 柱梁フレームに対し深く面落ちした開口部。 それは部位によっては極めて彫塑的に扱われている。

明治から昭和初期にかけて国内に建てられた金融機関の本店支店の多くは、古典主義様式を用いてその社屋内外観に重厚で堅牢な印象を纏わせた。 それと同質の強度を、過去の様式ではなく近代建築の語彙と素材で意匠化し昭和期半ばの金融機関本店の在り姿を表現する。 そんな意思を容易に読み解けそうな外観だ。

北東側外観
東側立面見上げ
北側立面の一部

しかしその立地にはやや違和を覚える。
前面道路は片側一車線。 「真間銀座通り」と名付けられてはいるが、周囲には集合住宅が建ち並び、その名称から抱く煌びやかな印象はない。 むしろ、近傍にて交差する国道14号の方が表通り。
初めて訪ねる者にとっては、幹線道路からやや奥に後退して当該建物が佇んでいる様に見えなくもない。

同信金の沿革は1928年発足の有限責任市川信用組合まで遡る。 即ち地域の金融機関。 果たしてどの様な経緯若しくは背景から当該敷地に本店を定めたのかと暫し建物を見上げながら周囲を観察していると、この裏手に見える通りも人や車の流れが結構多い。 路線バスも頻繁に往来する。
地図で確認すると、このエリアを僅かな離隔をもって並走するJR総武線と京成電鉄京成本線それぞれの市川駅と市川真間駅を結ぶ経路となっている。 つまり、名称に「銀座」と掲げるのにふさわしい同地の中心的もしくは求心的な街路として古くから位置付けられていたのかもしれぬ。
そんな街の在りように寄り添いながら、地域の金融機関の本店機構として当該建物が泰然と構える。



 
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2024.07.20/記