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建築探訪
匝瑳市役所本庁舎
所在地:
千葉県匝瑳市
八日市場ハ793番地2

建築年:
1974年3月

設計:
川島甲士

施工:
旭建設

北西側外観


※1
「町並み紀行」に登録している八日市場のページ参照。
JR総武本線の八日市場駅前広場の先に国道126号が東西に横切る。 交通量が多く、そして全国あらゆるエリアに支店展開する巨大商業施設が建ち並ぶその幹線道路を避け、一本北側を並行する街路を目的の市庁舎に向け歩を東に進める。 店舗兼住居が連なる商店街が、駅から離れるにつれて住宅地へと移行するのに伴い、この地域に固有の槙塀※1が点在し始める。 そんな風景の移ろいを愛でつつ進むその道路は、やがて当初避けていた国道126号と合流。 ふりかえれば、連なる大規模量販店の駐車場に幹線道路を往来する車が次々と吸い込まれてゆく。
距離を置かず並行するそれぞれの道路沿いの風景のギャップにやや眩暈を覚えつつ、ここまで来れば目的地まではあと僅か。 更に少し歩けば、妻側頂部に矩形ボリュームが二本力強く突き出す特徴的な外観が視野に飛び込んでくる。

南西側外観

西側立面

外観の印象を瞬時に決定づけるその矩形ボリュームに圧倒されながら庁舎に歩み寄る。
西側に接する道路からその妻側立面を眺めると、一階は左右両端の柱から外壁を後退させ、車寄せに面したエントランスピロティとしている。 外壁面にはガラス建具を多用。 内外の透過性を高め、人々を招き入れる構えを造り出している。 直上の二階は無窓のコンクリート壁が柱面とやや段差をつけて納まる。 三階はそこから大きくオーバーハングし、その両端に矩形ボリュームが更に突き出す。
上層に行くに従い迫り出す妻壁と、途上で唐突に切断されたかの如く突出する矩形ボリューム。 それらが織りなす外観は、何やら敷地境界すら超えて前進もしくは増殖し続けようとする意志を秘めているかの如き極めて動的な迫力が漲る。

矩形ボリュームは、その断面を保持したままバルコニーの用途に供しつつ建物の東端まで架構。 東側妻面においても西側と同様の形態処理が施されている。
東西に極めて強い軸性を持つ三階建てのボリューム。 それは、その前面に敷設された国道126号や並走するJR総武本線等によって規定されるこの地の東西方向の都市軸への呼応を意識している様にも受け止められる。 あるいは、それらの軸線上を疾走する車や電車のスピード感と真っ向から対峙する強度を誇っているとも読み取れる。
しかしそれのみに留まらないのが、一階南面に大きく張り出す下屋と北側に配された平屋の別棟の存在。 それらが基壇となり、動的強度に加えて安定感も建物に付与されている。


南西側外観
左手(北側)に議会棟。
南東側外観
下屋が雁行して南面に大きく張り出し基壇を成す。
北側外観
塔を介し右手に直交配置された議会棟。
※2

匝瑳市役所周辺の航空画像
L型配棟を成すと共に、南側の庁舎棟は三階建て部分とほぼ同じ面積の下屋が南面に雁行して張り出す様子や45度に振られた塔状ボリュームが確認出来る。
出典:国土地理院ウェブサイト
建物の北側に視点を移すと、南北方向に軸性を持つ議会棟が接続する。
すなわち、建物全体はL型の配棟。 そして直交する庁舎と議会棟の間には45度に軸性を振った塔状のボリューム※2。 この部分は階段室及びエレベーターシャフト。 建物の各フロアを結ぶ鉛直動線を担う。 塔状ボリュームは、庁舎の北東にもう一本。 同様に階段室を納めたこのボリュームの足もとには、庁舎から張り出す形で前述の平屋の別棟が、これも45度振れた軸性を基本に配置されている。
東西と南北に軸を振り分けた棟が、それぞれの内部用途に応じた形態を外観に纏いつつ、更に45度の異なる軸性を持つ塔や別棟と関連付けられながら混成する。 多種要素を組み込みながら、しかし破綻なく全体像が成立しているのは、細部に施された形態処理の妙。
例えば三階矩形ボリュームの全ての出隅にはくり型が施され、外形をシャープに引き締めている。 そのボリュームを地上より持ち上げる柱の外表面中央には竪方向に面落ち処理。 大断面の柱の鉛直性を強調している。 更に、塔状ボリュームの隅角に施された面取りの処置とコーナーサッシの導入。 建物各部位の開口部の配置と壁面ボリュームの関係の精査。 それらが混然一体となって、当該庁舎の外観がかたち造られている。

北側立面

南東側通用口廻り開口処置
※3
広報ようかいちば特別号
(1974年3月20日発行)
庁舎棟は南北の梁間方向が1スパン。 東西桁方向が4スパンの整形ラーメン構造。 南面に大きく張り出す下屋を伴う一階の執務空間は別として、二階と三階は南北の外壁面に柱が並ぶ以外の屋内は無柱。 そして階段やエレベーター、そしてトイレ等の執務空間以外の用途は北面に配された東西二本の塔状ボリューム内に収容されている。 従って行政機構の改編等に伴うフロアレイアウトの変更に容易に対応可能だ。 実際、竣工時に広報※3に掲載された諸室配置と現況は大きく変わっている。
と同時にこの構造形態は、東西桁方向に任意に増床が可能な形式でもある。 外観に見受けられる増殖するが如き動的な形態は、構造形式や内観構成とも連動している。
往時興隆したメタボリズムの建築潮流に与する設計思想をそこに見い出せそうだ。
 
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2014.12.06/記
2024.06.08/改訂