日本の佇まい
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建築探訪
等々力邸
所在地:
千葉県市川市

設計:
藤井博巳

竣工:
1974年

規模:
2階建て

現況:
現存せず

南側外観


方位に対しほぼ45度振れた街路が交わる角地に立地。 四方全ての立面が正方形よって構成され、屋根面もフラット。 即ち、立方体のボリュームを持つ鉄筋コンクリート造の事務所併用住宅。
南西及び北西側立面が接道。 更に南東側にも業務用のヤードが設けられているため、それらの立面は敷地外から容易に目に留まる。

各立面は、縦横それぞれの中央に目地を通すことで二行二列の整形なグリッドに分割。 そして個々のマスに必要に応じて正方形の開口部を配置している。 その開口部は、何らかのモジュールに基づき、各マスの区画に対してやや偏在して穿たれ、個々の開口部に嵌められた建具も更に細かいグリッドに分割する幾何学的形態操作が施されている。 しかも開口部ごとに異なる割り付けが採用されることで、外観に規律と多様性を並立させた表情を生む。

北西側立面二階開口部

西側外観
手前側隅角部一階左右の開口は竣工当時から改められているが、他の開口部との関連に考慮された建具の割り付けが施されている。
通りすがりにこの建物を見掛けた際には判らなかったのだが、後に設計者が藤井博巳であると知った。
建築専門誌に掲載される同建物の外観写真を確認すると、竣工当初は折版屋根は葺かれていない。 その分、コンクリート造のキューブとしての直方体のボリュームがより明確なものとなっていた。
折版の置き屋根以外にも、一階エントランス廻りの無目開口に建具が後付けされピロティ状のポーチが屋内化された。 しかしそれらの後補にも関わらず、キューブの数理的な分割に基づく表層形態操作の妙とその強度は、大きくは減じていない。 戸建て住宅やアパート等が建ち並ぶやや弛緩した凡庸な風景が広がる周辺環境の中にあって際立つ佇まいを形成。 ショールームの機能も併せ持つ事務所としての看板的な表示機能が獲得された。

設計者は立体や格子を数理的に操作する意匠を作風の一つとしているが、70年代半ばに造られたこの小さな作品にもその手法の流れを見て取れそうだ。



 
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2006.07.08/記
2022.07.09/改訂