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建築探訪
北吉原駅
所在地:
北海道白老郡
白老町字北吉原

建築年:
1965年

北側外観


線路敷の上部を横断して全ての機能を配備したいわゆる橋上式の駅舎。 広大な規模を誇る日本製紙北海道工場白老事業所に隣接して建つ。 当該駅施設は同社(建設当時は、大昭和製紙白老工場)の要請及び建設費用の負担にて整備された。
写真1〜3は、いずれも工場側からアプローチした際の外観。 線路敷の向こう側に敷設されている国道36号に面する逆側(南側)の立面も基本同じ構成をとる。

駅舎両妻中央にコの字型水平断面の壁柱が屹立する。 線路敷を挟んで対面配置されたこの二本の柱を支持材とし、上下二枚のスラブを線路を跨ぐ様に架構。
スラブは壁柱の左右に等しい寸法でオーバーハングしている。 この張り出し分について、下部スラブは壁柱の両側に設けたハンチを伴う片持ち梁によって支持。 上部スラブも張り出し部分を逆勾配とする折板形式によって構造体として成立させている。 この二枚のスラブがそれぞれ床と屋根になり、層間を帳壁で囲って内部空間を形成。 コンコースや事務室等の用途に供する駅本屋を成す。

その駅本屋の両側に折り返し階段が左右対称に取り付く。 階段の勾配に合わせて大胆に斜めにカットされた中壁天端が外観に個性を添える。 また、ハンチや折板を伴う駅本屋のボリュームと相まって、棟持ち柱の如く立ち上がる壁柱を中心軸とした図形的でシンメトリカルな全体像を整えている。



西側外観
北側立面
※1

駅本屋内観
梁間方向に手摺が設けられ、空間を改札内外に分けている。 天井面は、張り出し部分を逆勾配とした屋根スラブの折板形態がそのまま顕れている。

北側立面を眺めると、壁柱の左側に駅舎手前の法面を昇降するための階段が見える。 この階段を昇ると平場を介し正面にプラット・ホーム。 しかし平場とホームの間は手摺で仕切られており、ホームには直接アクセス出来ない。 構内に入場したい者は、一旦左手の折り返し階段を昇り橋上の駅本屋に向かわねばならぬ。 そして駅本屋内※1で改札を通り、逆の右手側の折り返し階段を降りてプラット・ホームにアクセスする。
一方、列車から降りた客は、右手側の折り返し階段からのみ駅本屋に昇ることができる。 昇り口の脇から直接外に出たいところではあるが、外周に廻された手摺によってその進路は阻まれている。 階段を昇って改札を通り、左手の階段を下って駅の外へと出て行くことになる。
ホームは線路を挟む相対式なので、対面するプラット・ホームにアクセスする際も同様の昇降を伴う。 そのため、線路を挟んだ南側の立面も北側と同じ構成をとる。 但し、左右の勝手は逆になる。

列車への乗降に際し、階段の昇り降りを必要とするのは橋上駅ならでは。 線路の両側を自由に往来する跨線橋としての機能を兼ね備えつつ、改札をスムーズに行うための昇降動線が幾何学的に整理され、それが内外観意匠にそのまま表現され建物の特徴を成す。

私が訪問した時点において、当該施設は無人駅の扱い。 コンコースに、「大昭和工場方面出口」と手書きされた旧社名時代の看板が風化したまま掲げられていた。
2020年、老朽化のため全く異なる内外観の駅舎へと建て替えられた。



 
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2022.09.17/記