背後に別棟が接続する南西面を除く三方向の立面は基本的に同じ組み立てで成り立っている。
外観目視において、その構造形式については一つの推定が可能だ。
つまり、正方形平面を持つボリュームの各立面に、モルタル薄塗りを表面に施した壁柱を外壁に直交する様に二枚ずつ立てる。
そして対面する壁柱どうしを梁で井桁状に繋いで構造フレームを形成。
そこにスラブと帳壁が取り付く。
壁柱の頂部を帳壁天端と揃えずに少し上部に突き出した形態処理が、そんな架構形式の可能性を視覚的に補強する。
仮説としてのこの井桁状の梁の交錯は、俯瞰若しくは見上げの視線による目視が可能であるならばちょうど赤十字社のマークに近似した形態が確認されることとなろう。
あるいはそんな形象を企図してこの構造フレームが実際に構想されたとしたならば面白い。
見えざる形象の内在を想起させる外観デザインの組み立ての妙。
帳壁は、横長連窓サッシの上下をレンガ調タイル張りの壁で挟む構成。
隅角部に柱を必要としない架構により、コーナーサッシを形成。
水平連窓の各立面への連続性が強化される※1と共に屋内からの眺望と開放性も確保される。
絞り込まれた外観構成要素ごとに異なる素材が与えられ、それらの対比が外観に与えるメリハリが美しい。
敷地になだらかな高低差が生じているため、建物正面にあたる北東側立面(右画像)に設けられたエントランス前には階段が取り付く。
その幅を左右二枚の壁柱間のスパン目一杯に確保し、堂々とした建物正面の顔を造り出している。
あるいは、必要な機能に比して十分に余裕のある幅が確保されているために、高低差が結構あるにも関わらず左右端部への手摺の設置は省略。
中央に一本取り付けてあるのみだが、現況のものは後補と思われる。
オリジナルは段床のみのとすることで、要素を絞り込んだ立面構成と関連付けていたのかも知れぬ。
その階段を昇り切った正面の出入り口左右の壁面は、他の外壁面とは異なり吹き付けタイル仕上げ。
更にガラスブロックによるポツ窓を三行三列並べ、エントランスとしての構えを簡素に設えている。
そしてその直上の庇は、両端にRをつけて立ち上げた断面形状をそのまま小口に現した形状。
これは、雨水排水を先端への自然流下のみで処理する機能をそのまま意匠化したものと思われる。
機能と形態が整理され簡素に纏められた端正な建物だ。