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建築探訪
古平町役場
所在地:
古平郡古平町浜町40-4

設計者:
北海道庁建築課

施工者:
水見組

建築年:
1927年

現況:
庁舎

写真1:外観


※1

写真2
ポーチ部分詳細
※2
頂部両袖に設けられたこの町章と、リブに挟まれた二列の上げ下げ窓の配置により、塔部分の壁面のシンメトリカルな意匠が強化されていると言えよう。

正面隅角部を45度に振り、搭状のデザインを施す。 そしてその下にアーチ状の開口部が二面に施されたエントランスポーチがあり、更にそれぞれに至る階段が二方向に伸びる。
交差点に面した角地に建つことを意識したデザインだ。

階段を昇ってアプローチするのは、一階部分を半地下的な扱いにしているため。 つまり、エントランスが設けられているのは二階になる。
二方向に設けられた階段を昇り、二方向に穿たれたアーチを通ってポーチ内に入ると、そこには更に二つの出入り口が設けられている。 向かって左側の面に設けられている出入り口は二階の行政執務室用のもの。 そして右側は、三階の議場に至る階段室用のものだ。
角地に建つ敷地特性を生かした二方向アクセスによって行政と立法を動線的に明快に分離し、なお且つその設計意図を巧みにデザインに組み込んでいるところが面白い。

ポーチ部分の半円アーチには三段のくり型が施されている。 また、アーチ両袖壁面の腰部分には三本の水平化粧目地が設けられている。 更に、階段の擁壁にも水平の化粧目地が施されていることが確認できよう。(写真2※1
これらの形態処理により、鉄筋コンクリート造でありながら石積みのような重厚なイメージが形成され、庁舎建築としての「顔」を造り出している。

塔状の部分は、三段くり型が施された台形断面のリブが縦に三列連なり、垂直性を強調する。
そのリブの間に上げ下げ形式の縦長窓が二つ設けられている(写真3)。 そしてその上部には直線的なデザインで構成された装飾が施され(写真4)、両袖に町章が取り付けられている※2。 更にその上に半円形の窓を設けた台形状の頂部を載冠し、塔としてのデザインを完結する。


写真3:
塔状部分詳細

写真4:
頂部装飾詳細

隅角部以外の外観の基本構成は、塔状の部分に設けられているのと同じ上げ下げ形式の縦長窓が並ぶのみのシンプルな構成。
そしてポーチや三階天端に曲面を伴ったパラペットが廻ることで水平性が強調され、外観に安定感を与えている。

少ない形態操作で最大のデザイン効果を実現したこの建物は、鉄筋コンクリート造の庁舎建築としては北海道内で最も古い歴史を持つ。



参考文献:
道央・道南の建築探訪<北海道近代建築研究会>

2006.11.18/記