明治から昭和初期にかけて建てられた瀟洒な擬洋風住宅が建ち並ぶ函館市西部の元町地区を抜け、しばし歩みを進めたその先にこの建物を見つけた時は少し驚きであった。
荒涼とした更地の向こうに、経年の全てをその表層に物質化させたかのような壮絶かつ寂寞とした風景が鎮座していた。

壁面に均等配置された開口部。
そして開口部の中のガラスを留めるスチール枠の割付も全て均一。
装飾を一切排除した沈黙の姿がそこには在った。
唯一の形態操作は、高窓となっている１，２階に対し、３階だけ大開口になっていることだ。
どのような与件でこのような計画が為されたかは定かではない。