日本の佇まい
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建築探訪
山口県林業会館
所在地:
山口県山口市
駅通り2-4-17

南側隅角部


※1

南西側外観

冒頭の写真に外観全景ではなく部分を載せた理由。 それは、この建物が全体よりも細部に堪能すべき対象が宿っているという印象を持ったため。

構造フレームに見受けられる意匠。 例えば、柱と梁の接点に施されたディテールは、社寺建築の組み物を思わせる処理。 しかし肘木のみで斗に該当するパーツが無いため、組積の様な雰囲気もある。 あるいは、柱の下部にも足固めの仕口を意識したような突起。
構造上必須と思われぬこれらの形態が、日本の伝統的木造建築のディテールを見立てたものであることは明らか。 同時代の国内において、同様のテーマのもとに外観デザインを纏めた鉄筋コンクリート造の作品は多い。 そんなデザイン潮流の中にこの建物も組み込まれる。

但し、そんな細部に比して全景はややいびつ※1
建物は、特徴的な構造ディテールを成立させるために下層より上層が張り出すオーバーハングをボリュームの基本に据えている。 オーバーハングさせることで各フロアに軒裏を形成し、そしてそこに組み物風のディテールを配置する事由が発生する。 しかし、そのプロポーションは最上層である三階部分で崩れる。 南西側立面三階部分の連窓の直上に僅かな出幅でも良いから小庇が廻れば少しは救われたのかも知れぬが、下階の構成に対し三階部分の違和が顕著。
結果、細部に注がれたエネルギーの割に、全体像はその魅力が大いに削がれてしまっている。 そして外観全体を一瞥した印象では凡庸な建物として通り過ぎてしまいそうだ。

ほんの一瞬の印象だけで価値判断を下すのではなく細部にも注視すること。 見知らぬ街を彷徨しながら建築鑑賞を愉しむ際の注意事項の一つを、この建物に接して教えられた様な気がする。



INDEXに戻る 2017.10.28/記