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建築探訪
津山文化センター
所在地:
岡山県津山市
山下68

建築年:
1965年

設計:
川島甲士

写真1:外観.1



写真2:軒裏見上げ
JR津山駅に降り立ち、駅前通りを北上。 途中、吉井川を渡り、近代建築や伝統的な家屋が散在する市街地を抜け、緩やかな昇り勾配を津山城跡を右手に眺めつつ歩を進める。 すると右手前方にこの建物が徐々に見えて来るが、遠目に眺める時点から既に尋常ではない存在感がじわじわと伝わってくる。
建物四面ともに上層に行くに従い迫り出すボリューム。 そのオーバーハングを支えるために等間隔に並ぶ異形の構造体。 明らかに社寺建築の組み物を意識したと思しきその形象は、しかしながら伝統的意匠の直截な複製という安易な手法に陥ることとは無縁。 建物の南西側に位置するアプローチ階段の手前から建物を見上げれば、その異形の意匠の連なりが圧倒的な造形力をもって視覚を襲う。
その迫力に畏怖して視線を右手にそらせば、今度は石垣と、そして独特の斫仕上げを施した巨大なコンクリートウォールが立ちはだかる。 それらは、隣接する津山城跡の壮大な石垣の連なりに強固に対峙しながらも、歴史を経て来たそれらの遺構と抗うことなく、むしろ風景をより一層趣き深いものへと昇華させている。

写真3:外観.2

写真4:
コンクリートウォールと城跡の石垣(右手奥)の対峙
あまりにも力強く、それでいて恐ろしいまでに美しく、そして完膚無き独創性を誇る。 一切の隙が見い出せぬ意匠の力に打ちのめされてズタズタになった視神経に困憊しつつ館内へと向かった。
施設管理者の方は、この手の来訪者に十分慣れている様子。
「どちらからいらっしゃいました?」
「あぁ、関東ですか。多いんですよね、あちらからお見えになる建築関係の方」
「どうぞ自由に見学してください」
ということで、内部をじっくりと堪能させて下さった。
写真5:内観
大ホールのホワイエ上部吹き抜け。
写真6:
ホワイエ両端の廻り階段

写真7:南側立面全景

ホワイエ上部の吹抜けにコンクリート製の梁が幾重にも連なる様は、あたかも東大寺南大門の上層を飛び交う貫が織り成す群景の如く。 そのホワイエ両脇に設けられた廻り階段に囲われた大断面の柱表層に施された動的なコンクリートの造形。 これらの構造体に共通するコンクリートによる荒々しい表現と大ホールを囲う壁面を埋め尽くすタイル仕上げとの鮮やかな対比。 そして、飛び交う梁材の狭間に浮かぶ白色のシリンダーの内部にトイレを配置するという意外性に満ちた空間操作・・・等々。
異色の造形が内観においてもそこかしこに凄まじい密度で乱舞する。 それらをじっくり愛でつつ館内を徘徊する私のことなど気に留める様子も無く、管理者の方が黙々と床面のPタイルの修繕を行っていた。

現代建築への伝統的意匠の移殖。 当該建物が構想された時期における国内の建築デザイン潮流の大きなテーマであったこの設問に対する応答が、過剰且つ饒舌にその内外観に顕然している。



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